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2016.02/07 21世紀の開発プロセス(17)

年末から年始にかけて、研究開発に関わる2つのショッキングな出来事があった。「あの日」の出版と、SMAPの解散騒動である。ベッキーの問題は、文化でも何でもない痴話話であり、この欄で取り上げるのは恥ずかしい限りだが、前者は研究開発部門で起こりうるごたごたのケースを、後者は新しい市場での価値共創が引き起こす問題の事例として参考になる。そして、両者共通しているのは、現場の中心人物の行動が大きく関わっている点であり、その人物の行動次第では、その後の展開にも大きな影響が出てくる。
 
まず、後者については、中心人物であるSMAPのマネージャーが芸能界を引退することで一応の終息となった。この知恵は、問題が発生した時の解決策として大切である。当方も、高純度SiCの仕事とは関係ない高分子の仕事を選び、古巣への貢献を行っている。当人が被害者であったとしても、問題解決に当たり貢献を軸にして何を守らなければいけないのか、を冷静に考えるべきである。SMAPの騒動もSMAPは解散せずとりあえず活動しているし、ゴム会社で異色の高純度SiCの事業も30年近く続いている。
 
前者については、論文捏造問題が発生した時に辞職し問題の終息を計るべきだった、と思われる。おそらく一切の責任をかぶることになっただろうと容易に想像でき、その時組織の人間の汚い行動で、辞職した人の名誉など踏みにじられたかもしれない。しかし、それにより優秀な研究者の自殺やその後の理研におけるSTAP細胞研究の方向が大きく変わったと思われ、歴史から見たときに十分な貢献を軸とした判断になっただったろう。
 
すなわち、早めに著者が辞職しておれば、STAP細胞について、自殺した研究者をリーダーにして細々と科学的な研究が進められた、と想像される。ゆえに自殺された研究者は著者に研究の将来を託す遺書を書かれたのだ。また、公開されたSTAP細胞の研究費に書かれていた報酬からすれば、十分にその責任を果たすべき報酬が税金から支払われていた。当方は著者の報酬よりも低い報酬で、創業者でありながら高純度SiCの仕事を失った。
 
この二例が示すように、研究開発や新事業開発においてどんな優れたマネジメントが行われようと、どんな優れたメソッドによるプロセスが開発されようとも、キーマンが正しい「働く意味」を理解していなければ、成果は意図しない方向に変わる。成果がすべて無くなる場合もでてくる。すなわち、いつの時代になっても、ヒトの問題は重要で、とりわけキーマンの教育指導は重要である。
 
「あの日」という本は、著者の性格が色濃く出ており、読み手により誤解を招くかもしれないが、事実だけを拾い集めると、真理を追究することが使命となる職場ならどこでも起こりうる流れが浮かび上がる。例えば、著者だけにネズミの扱いを指導してくれない、ノウハウを教えてくれない、ということは、特別な技能を有した研究者が陥りがちな独占欲の現れで、ゴム会社の研究所でも同様の状況は存在した。
 
電気粘性流体のプロジェクトに加わったときなど、具体的な作業以外何も伝えられなかったひどい状態だった。研究者の中にはどうしても成果を独占したいとか、機会あれば他人の成果も自分のモノに、というよからぬ考えを持ってしまう人物が出てくる。第三者が見ればよからぬ考えだが、その研究者は、真理以外何も見えていないので、悪事を働いている意識など毛頭無いのが困った点である。例えば、当方の成果を勝手に論文にまとめた国立x大の先生も急いで発表した方が良いからと、平然としていた。確かに見つかった真理を迅速に公開することは科学者の使命ではあるが。
 

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