2016.02/14 混ぜると練る
混練は、高分子をただ混ぜているだけのプロセスではない。練りも進めているのだ。練りのプロセスでは高分子のコンフォメーションも含めた変化がその理解を難しくしている。
混練の教科書を開くと分配混合と分散混合の違いが説明されている場合が多い。形式知として知っていても実戦ではあまり役に立たない知識である。なぜなら、L/Dが50程度の長い混練機でさえも、スクリューセグメントをどのように工夫しても100%完全な混合を実現できないのである。
少なくとも実用的な工程では、100%完全な混合(注)を実現できているところは無いと思っている。何を持って100%とするのか、も問題があるが、ここでは仮に混合しようとしている材料の完全に平衡状態となった分散という意味とする。
かつてバンバリータイプの混練機で混練時間を変化させて取り出したサンプルについて、Tgやそのエンタルピーはじめ各種パラメーターを計測する実験を行ってみたが、30分以内の混練で、およそ平衡状態に到達したと思えるサンプルは得られなかった。
シリンダーの中の滞留時間は二軸混練機では30分未満だろう。完全に材料が平衡状態になるまで混練されずにストランドが押し出されていることになる。仮に分散効率をあげるために微粒子の表面を低分子で化学修飾してもこの状態は大きく変わらないと推定される。
やや話がそれるが、分散効率をあげるために微粒子を低分子で化学修飾したり、分散助剤を添加したりするが、力学物性にその効果が観察されても電子顕微鏡で分散状態の改良効果が見えなかったりする。もし電子顕微鏡観察で改良効果が見てすぐに分かるようであれば、それは大成功である。
たいていは電子顕微鏡写真を加工し、統計的に整理してその違いを議論することになるくらい効果がわかりにくいものである。だから、粘弾性試験も含めた力学物性は分散の効果を知るために感度の高い方法で、その昔、指導社員がご自分で製造されたサンプルの力学物性と同じになるまで混練の練習をしなさいと言っていたことがよく分かる。
(注)熱力学的に平衡な混合状態を混錬で実現しようとしたならば、ロール混錬を用いる以外に無いのでは、と思っている。しかしロール混錬で行ってもどのくらいの時間が必要なのか、ご存知の方がいらっしゃったら教えてほしい。