2016.02/18 企画を実現する(3)
貢献を軸にした思考では、自己責任の原則が重要である。会社で事業企画をする機会は誰でもある。企画部門に属していない担当者の企画でも、今の時代において新事業の企画を拒む経営者はいない。すべてが知識労働者と呼ばれる時代では、誰もが企画マンである。
そのとき、企画した人の責任は大きい。それは給与とか権限に依存しない。少なくとも企画を提案した時点でその責任は発生する。すなわち、企画は自己責任の原則で提案すべきである。権限とか給与にとらわれるとよい企画はできないし、視点も低くなる。少なくとも自分が社長になったつもりで企画内容は考えなければいけない。
社長になったつもりで、といわれても給与は低いし権限も無い、さらには花の窓際族だ、という考えがあるならば、企画をしない方が良い。さらには、その企画で給与が増えることや昇進することなど期待しない方が良い。会社によっては、他人の企画を横取りする人もいるのである。また、人事システムがそのようになっている場合もある。
企画する気が失せるような極端なことを書いている、と言われそうだが、本欄では巷にあふれている自己啓発書のたぐいのようなキャリアポルノを書くつもりはない。企業の実戦で役立つ弊社の販売しているプログラムの内容の紹介が目的である。
どこの企業でも様々な人が勤務しており、その人々は善人ばかりではない。また、最近発売された「あの日」を読めば、おぞましい人間関係がでてくる。そして、著者の視点で書かれた一方的な悪書ともいえないどこの研究所でもありそうなシーンも出てくる。
これらを特殊な問題として甘く考える人には企画をしようなどと考えない方が幸せと、とりあえず結論を書いておく。企画によりイノベーションの規模が大きくなるほど企画者に対するストレスは大きくなる。
しかし、企業ではイノベーションが常に求められており、質の高い企画は企業の成長のために重要である。ゆえに質の高い企画を提案すれば、それは採用され、提案者はそれなりの処遇なり報酬があるかもしれないが、企画者は、あくまでも企画した後のリスクを十分考慮し、すべて自己責任として捉える覚悟が重要である。
そのような覚悟をして企画提案すれば、何が起きようとも企画実現のために邁進できる(注)。重要なことは、サラリーマン生活で一度は組織を動かすようなイノベーションを起こしたいと考えるかどうかである。今の日本では、プロジェクトに失敗しても首にならないし、チャレンジした醍醐味を味わえる会社は多い。そして、その気になればチャンスは誰にでもある。
(注)転職時に、子供二人がまだ小さく可愛い盛りだった。また、学位も国立T大を蹴っ飛ばしたばかりで、ここで書いているような社長の気持ちで企画を立てる勇気は無かった。せいぜい本部長あるいは部長の視点で、気軽にフィルムやフィルムの表面処理技術の企画を立てて推進していた。それでもドラッカーが言っているように、習慣としていくつか成果が出て、その中で3つほど外部の賞を頂ける仕事は出来た。
気持ちよく仕事をやっていたら、それまで倉庫として利用されていた部屋を区切り、日当たりの良い暇な席に異動になった。
そこで、一念発起早期退職をする覚悟をし、フローリー・ハギンズ理論では説明のつかない技術を企画した。科学では説明がつかないので高分子学会技術賞は逃がしたが、この企画は、基盤技術0からコンパウンド工場を産み出し、高純度SiCの企画同様にサラリーマン生活の良い思い出となっている。
その技術で生まれた押出成形によるベルトは、キャスト成膜によるPI樹脂ベルトを置き換えることに成功し、コストダウンと環境負荷軽減に貢献した。
また、ゴム会社で指導社員に頂いたカオス混合の実用化という宿題もまとめることができた。貢献と自己実現を行い、満足して退職しようとしたら、最終日2011年3月11日は会社に宿泊することになった。永遠に残る退職日の思い出を天からご褒美として頂いたが、サラリーマン誰でも褒めて持ち上げられる機会がつぶれてしまった。
やはり、死ぬ気の覚悟まではいらないが、本気度が足りないと満足の行く企画はできない。出世は運もあるのでコントロールできないが、少なくとも思い出に残るような企画は、それなりの本気度を出せば誰でも出来るはずだ。そのコツが弊社の研究開発必勝法である。
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