2016.02/24 企画を実現する(6)
企画には企画書がつきもので、弊社の研究開発必勝法プログラムでは、わかりやすい企画書の作成方法も指導している。企画書は会社の書類の中でもとりわけ重要な書類の一つで、その取り扱いは機密書類として位置づけられる。また、企画のオーソライズは企画書で行われ、意思決定される。
どんなに優れたシナリオやアイデアが頭の中にあっても、それを企画書としてうまくまとめることができなければ、まず、直属の上司すらその内容を評価してくれない。上司は、企画書で企画を評価する立場だが、部下の提案なのでわかりにくくても理解してくれ、という甘えは禁物である。もしそのような甘えがあると、まず直属の上司とのコミュニケーションに失敗する。
会社によっては企画書の形式が決まっているところもあるかもしれない。例えばSTAGE-GATE法などを取り入れているところは、審議を円滑に行うために企画書に盛り込む項目を決めている。中間転写ベルトのコンパウンド企画で困ったのは、この企画書のフォームが、研究段階を終えているところから始まっていたことである(注1)。
おかげでカオス混合技術は完成品という前提で企画書を書くことになった。これはこれでその後を考えると都合が良かったが、カオス混合技術の検討期間を企画に盛り込むことができず、当方の休日のサービス業務となってしまった。しかし、これすらも貢献を軸に据えて、受け入れたが、私生活は大変だった(注2)。
幸いなことに外部で協力してくれる会社もあり、その会社の敷地を借り中古の二軸混練機を設置して、手作りでカオス混合装置を創り上げていった。金も時間も無く、さらに企画書に記入する欄も無い技術でありながら、混練にイノベーションを起こす技術を創造することができた。
自慢話はこのくらいで、企画書に盛り込むべきおおよその必要事項は決まっている。これを審議しやすくするために細分化する過程で、その必要事項が落ちたりするので注意しなければいけない。明日必要な記載事項について説明する。(続く)
(注1)中間転写ベルトのコンパウンド製造技術(カオス混合技術)の開発企画を最初に提出した部署は、研究部門ではなく、生産技術部門である。だから、開発の終盤ですでに製品化予定などのスケジュールが厳密に決まっているテーマとなった。これは、カオス混合技術の開発というテーマではフェーズが合わないので、提案すらできない状態だったからである。すでにコンパウンド生産技術ができており、生産ライン建設から開発を始めなければならなかった。
(注2)教師の部活顧問のように、ブラック業務と騒ぐことができるのは、まだ幸せである。騒ぐ時間もなければ、精神的ゆとりすらない。必ず成功させる以外にない、道のない一方通行を進まなければいけないのである。高純度SiCの事業化の経験が役立ったが、貢献とは成果に焦点を合わせて行うことである。
カテゴリー : 一般
pagetop