2016.03/29 ソフトウェアー科学
人工知能Tayのことを考えていて思うのは、科学と技術の境界領域に情報科学は存在し、その存在に常にきわどさを抱えていることだ。すなわち本来科学で十分解明されてから技術として提供されなければいけない機能が、そのまま市場に提供され問題を起こしている。
おそらく今の様な研究を続けていると、人工知能の科学が大衆に誤解されるかもしれない。もしかしたらソフトウェアー科学という分野は存在せず、情報関係は工学分野だけで研究が進められ、技術を科学と誤解しているのかもしれない。
もしそのような状態であれば、現代の科学の時代において、科学的研究を行わず技術開発だけ行うとどのような問題が起きるのか、ということをソフトウェアー工学の技術開発から学ぶことができるのかもしれない。
例えばTayの問題をアジャイル開発の結果、と捉えるとこれは納得がゆくのである。技術として完成度の低い状態であるが、とりあえずおもちゃを提供してみた、というのである。しかし、そのようなおもちゃの提供は、かつてソニーのアイボやおもちゃメーカーのファービーが行っている。Tayがおもちゃならば、それらのおもちゃよりもレベルが低かった。なぜなら過去のおもちゃでは人類に対抗する行動をしなかった。
人工知能で形式知や実践知、暗黙知をどのように実現してゆくのか、そこには知をどのようにとらえるのか、という純粋に科学(哲学)として研究しなければいけない問題が存在する。
エージェント指向がその一つの成果というならば、これは新しい成果ではない。有機合成化学の世界ですでに1970年代に逆合成というコーリーの研究が存在した。コーリーは複雑な有機化合物の合成ルート開発をコンピューターに行わせるために逆合成という手法を開発している。そして実際にそれをコンピュータに載せて実行させ、プロスタグランジンの全合成に成功した。この成果はエージェント指向の特殊ケースである。
カテゴリー : 一般
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