活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2016.04/06 高分子のレオロジー(1)

レオロジーとは流れに関する学問であり、高分子においては粘弾性学として発展してきた。面白いのは、1980年前後までダッシュポットとバネのモデルを用いて研究されてきたのが、21世紀になりそれらのモデルを学会ではほとんど見かけなくなったことである。
 
ゴム会社で優秀なレオロジストの指導社員に出会ったのは幸運だった。この方は電卓でマックスウェルの方程式を解き、粘弾性のシミュレーションをやってのける強者で、表向き理論派の科学者で内側は現物現場主義の技術者だった。
 
さらに驚いたのは、ご自分の強みであるレオロジーについて10年後にはこのような方法論は無くなるだろうと言われていたことだ。やや斜に構えた人で、カッコづけでダッシュポットとバネのモデルが無くなると言っているのか、と初めて聞いたときに感じたが、自分の強みがやがて科学の世界で無くなる、と真剣に悩まれていた。
 
ただ、物理学者は自然現象を数値で捉える力に優れており、レオロジーだけでなくパーコレーションやフラクタルなど面白い数学の世界をわかりやすく指導してくれた。未だかつてこの方のように科学と技術のバランスがとれた物理学者に会った経験が無い。
 
さて高分子のレオロジーはこの方が言われたように、科学の世界では今やダッシュポットとバネのモデルで議論されていないが、技術で高分子材料を扱うときには便利な考え方である。特に粘弾性の温度分散データを眺めるときに現象を直感的に捉えることが可能である。
 
今、分子一本の粘弾性を研究している科学者もいるが、実用ではバルクの性質が問題になり、そのようなときには昔ながらのバネとダッシュポットのモデルが欠かせない。一種類の高分子でも、結晶部分と自由体積部分、ガラス部分の3つの構造が出来るので、バネとダッシュポットを組み合わせたモデルに無理があることがわかるが、手っ取り早く材料の改良効果を予測するには便利である。
 

カテゴリー : 一般

pagetop