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2016.04/17 高分子の融点(5)

組紐実験で天井に放り投げ、出来るだけばらばらになるように床に落としてみると、高分子の自由体積ばかりで構成された状態を創り出すことが出来る。すなわちこれは全くガラス相の存在しない非晶状態である。
 
実は高分子にガラス転移点がいつも存在する、というのは間違っている可能性がある。ガラス転移点が存在しない高分子材料ができる場合も希にあるのだ。
 
DSCで高分子材料の測定を行うと、希にTg(ガラス転移点)が現れないことがある。すなわちTc(結晶化温度)とTm(融点)だけのチャート、あるいはTmだけのチャートが得られる場合がある。
 
Tcが現れない場合は、新たにサンプルを取り替えて測定しても現れないので繰り返し再現性があり、気持ち悪くないが、Tgが現れない場合に、試料を交換して測定し直すとTgが現れ納得する。
 
このようにTgが現れない現象は再現性が乏しい。ゆえに何らかの測定のミスで科学的な事実ではないと解釈されているようで、高分子にTgが現れる、ということは当然の現象のように教科書には書かれている。
 
一度樹脂のペレットの一粒一粒の密度を測定し、密度の最も低いペレットについて、ニッパーで粉砕し、得られた試料でDSCを測定したところ再現良くTgの現れないチャートが得られた。
 
この試料でDSCを測定しているときにTgが現れるであろう手前の温度で昇温を10分ほどホールドし、測定を再開したところきれいなTgの変曲点が観察された。
 
これらの実験結果は、固体状態で、ある程度高分子鎖が動くことが可能な自由体積部分の存在を示しており、Tgより低い温度でもぴこぴこと動いている間に、少し動きにくい部分が近寄ってきて運動性が凍結されガラス状態へ変化していくように思いたくなる現象だ。
 
このストーリーは心眼で見た勝手な妄想だるが、間違いないだろうと思う。妄想癖は忌み嫌われたりするが、高分子については妄想が新たなアイデアを生み出したり、科学的に未解明な現象で引き起こされる品質問題の解決を容易にする。
 
また、高分子物理がまだ発展段階なので技術者はこのような妄想をできるようにしなければ目の前の品質問題を解決できる新しいアイデアを生み出すことができない。頭の中をいつでも思春期のように若々しくする努力が高分子の問題解決に有効である。形式知だけで高分子を眺めていても新たな技術は生まれない。

カテゴリー : 高分子

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