2016.05/07 三菱自動車の技術者は幸福か?
WEBで見られる三菱自動車の記者会見を休み中に再度見てみた。ふと、この会社の技術者は幸せかどうか疑問に思った。ランサーエボリューションは、技術者のシンボルとしてそれなりの役目を果たしたに違いない。あれだけの高性能を安価に提供していた努力は素晴らしい。
しかし、そのシンボルだった車の生産は終わった。自動車の燃費競争で科学的にできることしか行わないのでは、技術者の楽しみは無いのかもしれない。思い切った目標を示し、ロードマップを書いて市場をリードするような技術開発が三菱自動車ではできないのか。
先日、トヨタの経営陣が2050年にエンジンは無くなる、と宣言して世界をびっくりさせた。是非それまで生きて、この宣言が正しいか確認するとともに、車を買い換えるならハイブリッド車ではなく、乗り納めとなるガソリンエンジンの車を買いたいと思った。
ところで、一部では、自動車開発予算がトヨタの1/10だから今回の事件が起きた、などと言われているが、当方は、写真業界で苦しい戦いを行っていた会社で、三菱自動車の技術者よりもおそらく厳しい予算状況で、楽しく技術開発を行ってきた。
決算の二か月前になると開発予算の見直し通達がきて、ひどい時には、残り二か月人件費以外は0という状態で過ごせ、ということもあった。さらにひどい時には、残業代0となる。これはすでに残業代を生活費の一部として仕事をしていた人には、賃金カットに等しい。当方の管理していた高分子材料部門など、一台新規設備を導入すれば、それで設備予算が無くなる状況だった。その新規設備導入も全くできない年もあった。
今、三菱自動車では、ようやく賃金カットの交渉を始めたという。優しい会社である。厳しいゴム会社は儲かっていても賃金を抑えていたり、バブルの最中に人員削減をやっていた。自動車部品の製造会社はもっと厳しい賃金状況におかれているのだ。
おそらく、開発予算は自動車業界で少ない、と言われても、今頃賃金交渉が話題になるくらいだから、それなりの予算はとられていたのだろう。少なくとも当方が置かれた状況よりは三菱自動車の技術者は、今まで予算面で燃費問題を起こさなければいけないほどの苦労をしていなかったと思う。
開発予算があっても今の様な問題を起こしたのは、技術者が自分の担当している技術に誇りを持っていなかった可能性も考えられる。自分の技術に誇りをもって技術開発をしていたなら一番を目指していたはずで、達成可能な目標へ向かって事務的に仕事を行うような仕方はできない。燃費不正事件はこのような問題が根底にあるような気がしてきた。
技術者はトップを目指して技術開発を行っているときが、最も充実感を感じるようでありたい。そして、そのような技術者を常に応援したり、新たな進むべき方向を意思決定し具体的に提示する経営者がメーカーの経営者として理想的である。ゴム会社でCIを導入しファインセラミックス事業の推進を宣言した故H社長や、先日エンジンが無くなると宣言したトヨタの社長のように。
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