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2016.05/08 技術者の労働

ワークライフバランスが普及し10年以上経過する。技術者にとってワークはライフとバランスをとるべきか。知識労働者のワークはライフそのもののはずである。このように書くと、古いとか労働環境に対する無理解とか、さらにはブラック企業の社長というレッテルを貼られたりする。
 
しかし、働く意味に自己実現を認めたときに、ワークはライフと対立する概念ではなく、ライフの中に取り込んで考えたほうが効率的となる概念になってくる。ワークライフバランスの研修を受講した時に違和感があり、未だにこの概念に疑問を持っている。
 
当方は、ゴム会社で半導体用高純度SiCの事業を立ち上げたとき、いわゆる死の谷を約6年歩いた。毎日がサービス残業である。テーマの人件費など最小限にしなければいけないので他部門のテーマを手伝いつつ、本来の自分の業務を遂行しなければいけなかった。
 
事業が立ち上がり、現在まで続いているが、何もその見返りを受けていない。発明の対価は、無機材質研究所に支払われたが、当方には支払われていない。転職間際に書いた半導体治工具の特許対価にしても同様である。
 
しかし、その結果無機材質研究所の先生からその対価を頂けるという幸運の手紙を頂けるような、人生のサプライズを経験した。ゴム会社へ貢献そのもの12年間だったが、人生最大の喜びともいえる手紙の交換体験が生まれた。
 
ブルーレイでは、発明者が会社相手に特許対価の裁判を起こしているが、あの感覚は理解できない。確かに発明者の特許対価は重要で、当方も発明を譲渡する際には発明者の権利として必ず要求するようにしている。しかし無節操な要求はしない。
 
ゴム会社で要求しなかったのは、そのような規程があったかどうか知らなかったからである。無機材研の先生から手紙を頂いて、ゴム会社が当方の基本特許に対し対価を支払ったことを知った。ただそれを知ってゴム会社に対価を要求しようという気持ちにはならなかった。規程を読んでいないのは社員の自己責任、と新入社員研修で言われたからだ。不覚にもゴム会社の特許規程を読むのを忘れていた。
 
しかし、それよりもゴム会社に残した仕事は、お金に換算できない当方の遺産という自信があった。当方のゴム会社へ残した遺産はカネに換算できる価値ではない。そのくらいの誇りをもってゴム会社では貢献した。ゴム会社でワークはライフそのものだった。

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