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2016.05/18 マネジメント(2)

職場の先輩から、指導社員が毎日就業後囲碁や将棋を指していることを教えていただいた。いろいろな職場の方たちと勝負しているとも聞いた。会社内でもその腕前はトップクラスでどこからか毎日対戦を求められているそうだ。
 
就業後は指導社員が必ずいなくなるので、当方は一人で自由に仕事ができた。最初の一か月は教えていただいたことを何度も何度も反復練習し、実技習得に努めた。おかげで社内の実験室にあるバンバリーやブラベンダー、ニーダー、二本ロールに三本ロールすべて使えるようになった。
 
タイヤのパイロットプラントにあるバンバリーの運転方法も習得した。これは指導社員から特に力を入れて教えられたことだ。そしてサンプルを作るときには必ずその設備を使うように言われた。大半の研究所の人は研究所内のブラベンダーやニーダーを使っていたが、それらはせいぜい練習用だ、と教えられた。
 
1ケ月が過ぎ、開発に使用する材料がすべて揃ったから、と工場の原材料倉庫に連れていかれた。そしてそこから材料を実験室へ搬入する手順やらを細かく指導されて、明日から一人で1年間かけてすべての材料を評価し、シミュレーションで導かれた物性が得られたならば教えてください、と言われた。
 
途中経過は、データがまとまっておればよく、とにかくシミュレーションと同じ物性の処方が見つかるまでは、報告しなくてよい、ケガだけは注意してくれ、と言われた。課内会議で、月報はどうしましょう、と尋ねたら、書きたかったら当方一人で報告してよいとも言われた。
 
指導社員の月報には、毎月座学の一部の内容が書かれていた。指導社員に「もしかして座学の内容は今年1年の月報のまとめですか」とたずねたら、「そうだ、これが僕の仕事の仕方だ」と答えられた。1年後には、樹脂補強ゴムができたことになっており、その処方も教えられていた。
 
この会話で、指導社員はすでに一つ、実用的な樹脂補強ゴムの処方を持っていたこと、そして当方の仕事は、その処方の裏付けデータを得ることであると理解できた。
 
しかし、指導社員は当方の仕事について単なるシミュレーションの実証実験という説明の仕方をしていなかった。あくまで新材料の開発が当方のミッションと言われていた。リーダーのこのような仕事の仕方を社会人なりたてのときに学びその後の人生に大いに役立った。
 
仕事について、一年後得られるであろう成果の見通しをあらかじめ得て、その戦略と戦術を仕上げておく、という仕事の仕方は当方のスタイルとなった。入社して4年後2億4000万円の先行投資を受けてスタートした高純度SiCの事業も、無機材質研究所へ留学する前に、リアクティブブレンドによる前駆体合成技術の成功を確信していた。

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