2016.06/10 科学の方法(3)
KKDという言葉は、いつの時代から誰によりどのような意図で考え出されたのか知らないが、「形式知と経験知でDo」と教えてくれたのは、新入社員時代の指導社員である。大学の教養部の哲学の時代に、形式知と実践知(経験知)、暗黙知の3つが知の形態と習っていたので、暗黙知が入っていない点を質問したら、新入社員だから暗黙知が無いだろう、という回答があり納得した。
しかし、KKDは、一般に「勘と経験と度胸」の略として使われている。ゴム会社に入社したときに現場の職長さんからKKDを教えていただいたときにもこの意味だった。ゴム会社では開発部門でもKKDという言葉がよく聞かれた。
おそらく指導社員の意図は、彼の経験知を伝承するから、科学の知識と一緒に用いて仕事をやれ、と言いたかったのだと思った。なぜなら、技術を科学の知識だけで開発するには無理がある、というのが彼の口癖だった。
ゴム会社の社内風土にもこの考え方は生きていて、新入社員の半年間の実習の間に営業実習や開発実習も含め、約5ヶ月間の現場実習が行われている。そして、技術職に対して生産現場である工場の実習が2ケ月間義務づけられている。
アカデミアの世界からいきなりこのような長期の現場実習で会社がいやになる人もいる。当方もその一人だったが、同期でこの期間に退職したのはたったの3人である。一人は6ケ月間の実習を終え、配属が決まる直前に退職している。
その彼は、「この会社には技術という物が無い」といって去って行った。当方の印象と真逆である。当方は工場実習で科学と技術の違いを感じ、開発部門の実習成果を発表するプレゼンテーションにおいてS専務から技術という物を明確に指導された。ゴム会社には科学で説明がつかない技術が現場にいっぱい転がっていた。また、研究所以外の製品開発部門では科学よりも技術の方法が重視されていた。
カテゴリー : 一般
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