2016.06/24 配合設計(たとえば難燃性樹脂)(6)
40年近く前にJIS化されたLOIは、酸素と窒素の混合気体の雰囲気の中に細長い板状のサンプルを立て、その上端に着火して燃焼状態を観察する試験法である。
この試験法では、継続して燃焼するために必要となる最低限の酸素濃度を指数化して、材料の難燃性を評価する。
測定手順から理にかなった燃焼試験法に思われるが、実火災において、この尺度で求められた難燃性の評価が不適切な場合もある。
例えば、空気の酸素濃度は約21%なので、LOIが21以下となるように寝具を材料設計していたならば、寝タバコの火が寝具に着火して火災につながる危険性がある。
しかし、LOIが21以下でも燃焼が広がらない安全な材料を設計する方法がある。それは熱で簡単に溶融し自己消火する材料設計手法である。このように設計された材料では、寝たばこ程度で着火しても、溶融時の吸熱効果で火が消える。この難燃化手法は溶融型難燃化システムあるいは溶融ドリップ型難燃化システムと呼ばれている。
この考え方で、PETボトルのリサイクル材(以下R-PET)を80wt%含有し、射出成形可能な難燃性ポリマーアロイを高価な難燃剤を用いないで開発した。
この樹脂の配合において20wt%に相当する組成は、射出成型が難しいPET樹脂を容易に射出成形できるようにするための成分や、靱性向上のため添加され混練プロセスで動的架橋されたゴム成分、弾性率を向上できる成分、溶融型で難燃性機能を付与する成分などである。
すなわち、このポリマーアロイは強相関ソフトマテリアルの概念で設計されており、それ専用の手法で開発された材料である。
この材料は、R-PETが80wt%含まれるポリマーアロイなのでLOIは18程度となるが、UL94-V2試験ではドリップ効果により自己消火性となり合格する。
LOIによる難燃性評価では空気中で燃焼し続けると判定された材料でも、自己消火性と判定される試験法に疑問を持たれるかもしれない。これは、それぞれの試験法においてサンプルへ着火する方法が異なる点に原因がある。
カテゴリー : 高分子
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