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2016.06/28 配合設計(たとえば難燃性樹脂)(9)

高分子材料の難燃化とその評価法について、LOIとUL94-V試験を事例に、難燃性評価試験の概略を説明してきた。ポリマーアロイの用途が決まると、その分野における難燃規格が材料の品質項目の一つとなるので、難燃性ポリマーアロイの技術開発では、用途に応じた材料設計方針が重要となってくる。
 
これは、「難燃規格を通過するための材料開発」を意味しているが、それでは、科学的な香りがせず、いかがわしささえ感じる読者がいるかもしれない。しかし、難燃規格が材料の用途において実火災を考慮し制定されている点に着目すると、これは賢明な考え方である。
 
 30年以上前にJIS難燃2級という建築材料向けの欠陥評価法があった。そして、この評価法に合格するように膨らみ変形する発泡体が台所の断熱天井材用途に開発された。評価装置に取り付けて試験を開始すると、点火された試験炎から逃げるように高分子発泡体が膨れるため着火することはない。その結果、煙も出なければ燃焼による発熱も無く、あたかもセラミックスボードを評価しているようなデータが得られて試験が終わる。
 
 このような材料が市場に出まわった結果、耐火建築でも実火災で簡単に燃えるという事件が発生し社会問題になった。そこで規格の見直しが行われ、実際の天井材に近い大きさの試験片を用いる簡易耐火試験が、プラスチック天井材の建築基準として採用されるにいたった。
 
これは、当方が技術者としてスタートした頃の出来事であり、問題を起こしたJIS難燃2級という規格が科学的に研究されて制定された評価法だったので、難燃性高分子を開発するには、評価「技術」が重要であるという認識を持つようになった。
 
 高分子の難燃性を評価する技術は、いろいろ開発されてきた。紙面の都合でそれらをすべて解説できないが、これら評価技術の細かい知識を習得するよりも、開発のターゲットとしている市場で要求される難燃規格についてその知識を深める努力をした方が実務上役に立つ。
 
 火災で高分子が燃える、という現象では、火源により高分子が熱せられて温度が上昇し、添加物や高分子の分解物がガス化、そしてその酸化が激しくなり、燃焼に至る。この時酸素不足となれば、酸化が終結し火が消える。高分子の構造に二重結合を形成しやすい要因や、脱水素を促進する触媒機能を示す添加剤あるいはラジカル補足剤が存在すれば高分子は炭化する。ここで生成する炭化物はチャーと呼ばれ、燃焼している面で発泡したチャーが形成されると、それが耐熱断熱層になり燃焼が停止する。
 
 この燃焼の各段階すべてを同時に評価できる技術の開発は大変難しい。ゆえにすでに提案されている難燃規格は、燃焼の一部のプロセスについて製品の用いられる環境で発生する現象を考察し制定されている。

カテゴリー : 高分子

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