2016.07/03 配合設計(たとえば難燃性樹脂)(13)
TGAの測定結果を見ると、測定雰囲気の違い(空気中と窒素中)で熱分解の様子が異なり、600℃における残渣が空気中で測定したときに窒素中よりも増えているというデータが得られている。
窒素中の測定では、単なる熱分解過程の情報となるが、空気中で測定した場合には酸化分解の情報も含まれてくる。実際の火災では、空気中における熱分解となるので空気中におけるTGA測定が行われるが、酸欠状態でも燃焼が進行するので、空気中だけでなく窒素中のデータと比較して考察する必要がある。
このTGAのデータでは300℃あたりから600℃までの領域で難燃剤の働きにより、チャーを生成しながら熱分解していることを読み取ることができる。また、有機物の分解が終了した600℃の残渣量を比較することにより、難燃剤の働きによるチャー生成の効果を評価できる。この考察のためにLOIと600℃における残渣量との関係をグラフでまとめている。
空気中で計測されたこの結果について考察すると、TCPPではLOIが増加していてもチャーの生成量が変化していない。また、DAPPはFyrol-6と同様にチャー生成量がLOIと相関しているが、Fyrol-6よりもLOIとの相関が高い。この考察から、炭化促進型難燃剤でも2タイプ存在することが示唆される。
さらに600℃におけるそれぞれの残渣について化学分析してみると、DAPPでは、配合した量に相当するリンの90%近くが残っている。しかし、Fyrol-6やTCPPでは、同様の分析で大半のリンが揮発していたことが示された。
詳細を省略するが、この難燃剤の揮発と以前説明した煤発生量とは関係があり、煤がポリウレタンから生成された炭化物である点に着目すると、ホスファゼンは燃焼時に煤を発生せず効果的にチャーを形成する機構で炭化促進している。これは高分子の難燃化技術を開発するときに重要なヒントとなる。
以上の評価技術を駆使した考察から、炭化促進型難燃化システムでは、燃焼時にリンが揮発しないように燃焼時の系内に固定するシステムが理想的な難燃剤ではなかろうか、という経験仮説が思い浮かぶ。また、オルソリン酸の沸点が240℃前後にあることや、TGAにおける重量減少速度がこの温度領域で早くなることから、燃焼時にリンを固定化するアイデアは有効と思われる。また、この経験仮説をホスファゼン以外の難燃剤で確認できれば、新たな難燃化システムの開発につながる。
カテゴリー : 高分子
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