2016.07/07 配合設計(たとえば難燃性樹脂)(16)
配合設計を組み立てる段階では、タグチメソッド以外の統計手法で開発を進めてもよい。例えばドリップ防止に用いられるフッ素樹脂の組み合わせ効果については、一因子実験による分散分析で有意性を示すことができる。
また、メラミンイソシアヌレートや硫酸メラミン、リン酸メラミンなどのメラミン系の添加剤にも他の難燃剤との組み合わせについて交互効果が存在する。こうした組み合わせ効果を見つけるには、タグチメソッドを使用するよりも多変量解析や実験計画法で探索した方が効率的である。
システムが決まっていない段階で、タグチメソッドは、SN比を求めるための実験数が多くなり探索に時間がかかる。ポリマーアロイの難燃化を検討するときに、評価技術の知識以外に開発手法の特徴を理解して、効率的にロバストの高い技術開発を指向するとよい。
複雑な交互効果を用いた事例として、ホスファゼンとリン酸エステル系難燃剤の併用システムを開発した。ホスファゼンとリン酸エステル系難燃剤の組み合わせは公知となっているが、うまく計画を組んで実験すると、このシステムを最適化でき、その交互効果が顕著に表れる場合がある。そしてイントメッセント系の高価なリン酸エステルを用いなくても低コストなシステムを組むことも可能となる。
また、PC/ABSのような相分離系ポリマーアロイでは、難燃剤がどの相に分散しやすいのかという問題もある。このような問題では、OCTAを活用でき、シミュレーションでリン酸エステル系難燃剤の分散をある程度予測することが可能である。
ちなみにホスファゼンとリン酸エステル系難燃剤の組み合わせシステムについて、シミュレーションで見いだしたリン酸エステルを用いてタグチメソッドによる最適化を行い、すべての樹脂材料がリサイクル材である難燃性PC/ABSの開発に成功した。
この時、基本機能にLOIを用いて、信号因子として組み合わせ難燃剤の添加率を3水準、誤差としてLOI評価に用いるサンプルの厚みをとってタグチメソッドを行っている。その結果、ホスファゼンと特定のリン酸エステルとの組み合わせでSN比3dBの改善効果を見いだした。
カテゴリー : 高分子
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