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2016.07/12 耐熱可塑剤

PPSやPPEなどのエンプラを混練する時に困るのは、混練温度が高いことである。すなわち混練温度が高いことから、これらの樹脂と組み合わせる添加剤に耐熱性という制約が付く。
 
PPSと6ナイロンの配合についてカオス混合を行うときに、PPSの混練温度は低く設定している。どの程度に、というのはノウハウの範囲だが、この技術が高分子学会技術賞に推薦されたとき、説明に困った質問があった。
 
ナイロンが分解して低分子量になり、相容したのだろう、という審査官の決めつけによる質問である。混練温度は低いので分解は起きていない、と回答したら、それではPPSが溶解しないだろう、と質問が返された。
 
低い温度で混練が進行する特殊な技術だと説明したが理解して頂けなかった。サラリーマン最後のチャンスで技術賞を取り損ねたが、残念と言うよりも科学的な現象以外信じて頂けないという状態に頭を抱えた。
 
20世紀は科学が技術を牽引した時代だが、21世紀は技術が非科学的な現象をどんどん実用化し、科学を牽引しなければ、イノベーションは生じない。特に高分子分野は科学的に正しいと信じられている内容にも怪しい部分が存在する学問である。
 
セラミックスも同様で、かつて焼結理論に関して大激論があった。高分子分野にもこの時のような議論がされても良い理論が幾つかあるが、日本の高分子研究者は優しい人ばかりだ。
 
さて、PPSと6ナイロンの相溶は、それを達成しなければ開発が失敗し、その責任を取らされる立場で実現している。退職前だったのでそのような役割が回ってきたのだが、すなおに失敗するのは悔しいからカオス混合を考案した。
 
しかし、その時耐熱可塑材のアイデアも同時に誕生した。PPSに6ナイロンを相溶するとそれぞれのTgが一つとなり、両者のTgの中間に現れる。PPSにとってはTgが下がることになる。その結果、PPSのTgを基準にした耐熱性は低下する。
 
耐熱可塑剤のアイデアは、エンプラの耐熱性を落とさずに混練時の可塑化効果だけを狙った化合物ができないかというコンセプトであり、可塑剤と呼ぶのは正しくないが、適当な言葉が無い。良い名称は見つかっていないが、ようやくコンセプトを実現出来た。ご興味のある方はお問い合わせください。
    

カテゴリー : 高分子

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