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2016.07/15 石棺

東京電力福島第一原発事故の廃炉作業において石棺が検討されている。今更だが、原子力技術について関係者の無責任な仕事のやり方やアカデミアの軽薄さが伝わってくるニュースである。結局原子力技術は政治力無くして解決のつかない分野であることが明確になった。
 
当方が大学受験を目指した時代は二度のオイルショックの影響も有り、原子力工学科の偏差値は医学部並みのところもでるなど高かった。当時優秀な人材が原子力工学を目指し、優秀な彼らの努力の結果が福島の石棺となろうとしている。
 
福島の事故で最も反省しなければいけないのは、最悪の事態の想定が全く成されていなかったことである。これは誰が言い訳をしたとしても現実はそのようになっている。公害の経験が生きていないばかりか、PLさえも無視されている。
 
津波の可能性を統計で扱ったり、津波が防波堤を越えたときのための非常電源が建屋の屋上におかれず、防波堤よりも低い位置に置かれていたり、非常用電源のコネクターが規格品でなかったり、センサーの電源が外されていたり、発電所の全体像を把握している人がいなかったりと、事故当時に様々なヒューマンエラーが見つかったのにその責任は問われていない。
 
さらに最近では凍土壁の失敗で夏休みの工作感覚の対応である。福島の事故で原子力関係のアカデミアや技術者は本当に深く反省しているのだろうか。もし石棺にするようなことがあれば大問題である。それは日本の原子力に関わってきたアカデミアや技術者の怠慢の象徴となる。
 
原子力工学は他の学問と異なり、過保護過ぎた。その結果としてアカデミアも技術者も、そして事業責任者もあぐらをかいてきたのである。もし関係者にプライドと真摯に学問や技術開発を進めてきた自信があるならば石棺を回避し公園と海水浴場にするぐらいのアイデアを提案して欲しい。
 
原子力発電は発電方式として最もコストのかからない方式として説明されてきたが、石棺にした場合には、その周辺の価値の消失も含め発電コストを考えなければいけない。現在福島で行われている作業も含めると、本当は最もコストのかかる発電方式ではないだろうか。
 
(注)この欄は、7月15日早朝書きました。16日の朝のニュースで、「原子力損害賠償・廃炉等支援機構の山名元理事長は15日、東京電力福島第一原発の廃炉に向けた戦略プランで、溶融燃料(燃料デブリ)を取り出さず原子炉を覆う「石棺」方式に言及したことに関して「石棺」の表現を削除する意向を表明した。」とのこと(16日追記)。
 

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