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2016.07/20 とにかく明るい安村(2)

昨日のこの欄の内容について問い合わせがあった。安村氏の芸では裸が重要ではなく、裸は一つの因子だ、と述べた記事である。この話と酸化スズゾルの関係について問い合わせが来た。
 
繰り返しになるが、とにかく明るい安村の芸は、多数の因子の組み合わせにあり、「安心してください」という台詞が最も重要なポイントで、裸に面白さがあるわけではない。その比較例として素っ裸の状態でお盆を用いた芸を紹介した。
 
自然現象の観察や他社のリバースエンジニアリングその他技術開発ですばらしい機能に出会ったときに、その機能のすばらしさの本質を見誤り、本質とは異なる部分を真似て単なる二番煎じの技術を生み出すような技術開発をするケースがある。
 
ちょうど安村氏の芸で「裸」が万人にうけた原因と取り違え、お盆を巧みに操る芸を演じた芸人と同様のケースである。この芸は宴会芸としてはうけるかもしれないが、お茶の間のすべてをうならせるほどの芸では無い。「安心してください」という本質を真似ていないからである。
 
酸化スズゾルの帯電防止層の特許が初めて公開されたときの時代、1950年代は、酸化スズの導電性が発見され、その透明導電体としての機能が注目された時代である。ただし、1980年代になって、高純度酸化スズ結晶は絶縁体であることが無機材研の研究で明らかにされた。
 
酸化スズの導電現象がどのような機構なのかはこの30年間に十分研究されたが、アンチモンやインジウムがドープされたときにだけ、酸化スズに高い導電性が出ることは早くから知られていた。むしろ高純度酸化スズは絶縁体ではないか、という疑いがもたれていた30年間である。
 
ゆえに酸化スズの研究の歴史の流れからは、酸化スズを帯電防止材として用いることが可能、ということは昭和35年頃に勘の良い技術者であれば分かっていた。これは、小島よしおの裸芸がうけた状況と似ている。
 
「そんなの関係ネエ」という台詞が大受けしたのである。裸は、笑いの一つの因子であり、酸化スズではそれが導電性なのである。すなわち特公昭35-6616が長い間注目されなかったのは、単なる裸芸と勘違いされ、当たり前と受け止められていたからだ。(続く)
  

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