2016.08/18 観察は、科学特有の行為か
仮説設定をして実験をしたり、あるいは観察という手法で科学的に取り組んでも間違った結論を出す、ということは科学的方法で起こりがちな問題である。イムレラカトシュの言う否定証明という科学的解決法に潜む問題を知っていると注意できるのだが。
電気粘性流体をゴムのケースに入れた製品では、ゴムのケースから電気粘性流体へ配合剤が抽出され、ごてごてに増粘し使い物にならなくなる。解決方法は界面活性剤しかないのだが、これが否定証明により否定され当方に応援の仕事が回ってきた。
ゴテゴテになった電気粘性流体にポリエチレンオキシドを添加して振ったところ、少しずつ粘度が下がり、2時間眺めていたら、流動性が出てきた。初めての実験だったので、窓際でじっと観察を続けた成果である。
ポリエチレンオキシドを選んだのは、ゴムの添加剤には極性の高い化合物が多いからだ。ゆえに効果が無ければ粘度変化は無いはずで、効果が少しでもあれば、注意深い観察でそれを検知できる。
通常は粘弾性試験器で粘度変化をモニタ-すれば検知できるが、粘度増加の様子を観察したかった。すなわち、粘弾性試験器では、全体の細かい現象を把握することができるが、不均一な変化を捉えにくい問題がある。このような問題では、マクロな解決法も考えるべきで、そのため目視で観察することにした。
目視観察は正解で、ポリエチレンオキシドを添加したときにはざっくりとした変化が観察され、その後粘度が下がる、という現象を見いだせた。すなわち経験から界面活性剤で解決できる、という結論をすぐに出すことができた。
何か仮説を立てて観察をしたわけではないこの実験が大正解で、すぐに問題解決でき、特許出願や製品化に寄与した。このように実験や観察は、科学的に行う必要はなく、ヒューリスティックに行っても正解にたどりつける。
カテゴリー : 一般
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