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2016.10/16 基礎研究の効率的推進方法(1)

ノーベル賞週間が終わったら基礎研究の重要性がTVニュースで叫ばれるようになった。日本人の受賞が続くのは過去に基礎研究を大切にしてきたからで、現代の様なすぐに成果が求められるような時代ではなかった、というのがこの10年ほどの定型句になっている。
 
誤解を恐れずに言えば、今の時代でも十分にアカデミアは恵まれた研究環境である、と思っている。むしろ過去の研究マネジメントが十分に機能していなかった問題を論じたほうが良い。大手企業では、かなり学習が進み効率的に基礎研究を行っているところも現れた。
 
基礎研究を効率的に行う一つの方法として、「開発を行ってから研究を行う」、という方法がある。開発を行い、人類に役立つ成果を出してから、その成果の裏に潜む真理を明らかにしてゆく。これはアジャイル開発とも整合する。もし開発成果で大きな売り上げが得られたなら基礎研究の投資を大きくできる。また、多額な投資を行っても、売り上げ規模が十分に大きければ健全な投資である。
 
すべてがこの方法でうまくゆく、とまで言わないが、今の時代行うべき基礎研究は大抵この方法で進めることが可能と思っている。また、新たな基礎研究のテーマも見つかったりする。
 
半導体用高純度SiCの基礎研究はこの方法で進めた初めての事例で、学位も取得できた。また事業は開発開始から30年以上経った現在も続き、売り上げが増加している。これは当時のU本部長の「研究やる前に、まず、モノもってこい」というご指導のおかげである。
 
高純度SiC合成技術の開発された状況は過去にこの欄で書いたが、基礎研究などやらず、2億4千万円の先行投資を受け、すぐに10kg/日の規模のパイロットプラントを建設した。パイロットプラントを建設しながら、変形横型プッシャー炉などプロセス特許も書いていた。
 
パイロットプラントができて、製造された高純度SiCをもってマーケティングを行ったところ、まだ世の中は研究段階で大きなマーケットが存在しなかった。周りから駄馬の先走りと言われたりした。ただ、マーケティングをした成果で、K社からシリコーン引上げ用るつぼやSiCヒーターの試作など頼まれたりした。(続く)
 
 

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