2017.01/10 高分子材料(4)
昨日、高分子材料の物性は自由体積と呼ばれる構造の存在故にばらつく話を書いた。この自由体積の量は、高分子の混練プロセスの工夫で少し制御可能であるがこのあたりについては弊社企画のセミナーでデータを用いて解説している。
とりあえず、昨日の重要なポイントは、高分子材料が紐状の分子の塊である点だ。このイメージが頭にあると、クリープという現象についてもその怖さを理解できる。
昨年末、カメラを整理していたらニコンF100の裏蓋のフックが壊れていることに気がついた。裏蓋はオプションのデータパックという5万円前後の高価な商品だったが、樹脂製のフックが疲労破壊していたのだ。
おそらくニコンの材料技術者は高分子の疲労破壊にクリープが関係していること、そしてそのクリープは高分子が紐状の分子の塊であることから避けられない物性であることを理解していなかったようだ。
カメラ会社としては一流であってもそこに勤務している材料技術者の力量が低かったために、看板商品であったF100を10年程度で自然に壊れる商品として設計した。
もしニコンの材料技術者が昨日書いた内容程度の知識を持っており、高分子のクリープの機構を理解しておれば、裏蓋のフックの設計を変更していたに違いない。
すなわち昨日書いた内容を少し深く理解しているだけで、このような失敗を防ぐことができる。しかし、昨日のようなことは昔の高分子材料の教科書には書かれていない。また、大学の先生の説明では難解な説明となる。
カテゴリー : 高分子
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