2017.01/11 高分子材料(5)
材料のクリープという現象は、一定の力を材料に加えたときに材料がわずかに変形するが、その変形量が時間とともに大きくなる現象、あるいは時間とともに力が緩和する現象である。
セラミックスのような硬い物質でもクリープは起き、例えばSiCが拡散クリープにより高温下で変形することが知られている。高分子では、紐状の分子がじわじわと抜けてゆくような機構でクリープが生じる。
身近では靴下や下着のゴムが長年使用していると緩んでいることに気がつくが、これがクリープである。若いときには下着のクリープなど気がつかなかったが、中年になり、腰回りが標準以上になっていると、このクリープ速度の速さを痛感することになる。
そのほか樹脂製のフックに耐荷重以内の荷物をぶら下げていたのに、気がついたらフックが破壊し、荷物が下に落ちていた、と言う現象もクリープから疲労破壊が生じた現象である。
昨日のニコンF100のフックが疲労破壊した事例も同様で、裏蓋のフックにはボタンを押すと開くように常にバネで力がかかっていた。その結果、クリープにより疲労破壊に至ったのだ。
このような問題では材料のクリープ速度を計測し、使用実態に合う材料を選択する。例えばFRPであればクリープ速度は樹脂単体よりも遅くできるので、10年でフックが壊れる、という失敗を防ぐことができたかもしれない。
カテゴリー : 高分子
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