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2017.01/27 高分子材料(17)

ゼラチンとシリカゾル、ラテックスの3種のコロイドを混合するときに、それぞれのコロイド溶液に分散している微粒子表面のゼータ電位が乱れる現象を避けることができない。このような多成分が分散しているコロイド溶液を調製するために一成分づつのコロイド溶液を用いたときには(成分数-1)の回数で混合することになるので、あらかじめ複数の成分が安定に分散しているコロイド溶液を一度に作成して、混合回数を減らす戦略が効果的である。

 

ゼラチンとシリカゾル、ラテックスの三成分のコロイド溶液を混合する場合、ゼラチンラテックスとシリカという組み合わせ、あるいはシリカゾルとラテックスがあらかじめ均一に分散しているコロイド溶液にゼラチンを組み合わせる方法、ゼラチンとシリカゾルが安定に分散しているコロイド溶液へラテックスを加える方法などがある。

 

ゼラチンを保護コロイドとしてラテックスを重合して製造されるゼラチンラテックスでは、シリカゾルをここへ加えるだけなので混合回数を1回に減らすことができたが、シリカゾルの凝集を防げなかった。ゆえにシリカゾルとラテックスが均一に分散している状態へゼラチンを投入した時にどのようになるのか期待されたが、シリカゾルとラテックスが均一に分散している状態を作り出す手段が問題となった。

 

この解決策としてシリカゾルでミセルを形成させてラテックスを重合する戦略が有効である。ただ、当時このアイデアで成功した人は世界で誰もいなかった。しかし、ゴム会社でゾルゲル法を検討していたときにこのアイデアが浮かび少し手掛かりが得られていた。その手掛かりとは粒子に界面活性剤を吸着させてミセルを形成する方法である。

 

ただゴム会社で実験したときには増粘したので、あまり筋の良いアイデアではないと思っていた。また、ゾルへ高分子を吸着させたときのレオロジーに関する川口先生の御研究を学会で拝聴したときにもこのアイデアの可能性はありそうだが、講演内容から推定するとゾル粒子と高分子の組み合わせを探索するのに時間がかかるだけでなく、試行錯誤で探索した場合に無限ループになるような予感がした。

 

しかし、写真会社へ転職し、ライバル会社の技術に抵触しない重合条件の探索実験を見ていて、あわよくばという気持ちが湧いてきた。それが先日この欄で紹介したホワイトボードを用いたコーチングの背景である。

 

科学は論理的ゆえに単なる思いつきのアイデアに対して、それを否定する時に強力な説得力をもつ。川口先生のご発表をうかがったときには自分のアイデアを一旦は否定的にとらえた。しかしあきらめかけたアイデアであったが、大事に頭の隅に寝かしておいた。頭の中に寝かしている間に熟成されて、コーチングで役立った。ホワイトボードの前で行ったコーチングでは、当方の発言に対して、否定証明の嵐が吹いたからである。

 

ただし自分でも一度は否定していた内容なので、嵐に立ち向かうことは容易だった。ある仮説なりアイデアについて科学的に否定証明を行うことは容易である。これゆえゴム会社では科学でモノを造ることはできない、と言われたりした。また、それゆえにできることについては、すなわち肯定的に物事を進めようとするときには、科学的ではなく直観に訴えるやり方が推奨された。いわゆるKKDによるモノづくりである。

 

開発現場で隘路に入ったときには、科学の制約を取り除くコーチングの進め方が大切である。科学は真理を導き出すには有効な方法だが、現象から機能を取り出さなければいけない技術開発では、現象をどのようにとらえるかが重要で、科学にとらわれない自由な発想で現象をとらえることができたときに新しい技術が生み出される。このことがよくわかっていない人が多い。科学にとらわれない自由な発想で現象をとらえるやりかた(問題解決法)について詳しくは弊社へ問い合わせていただきたい。アイデアを寝かせるという方法は一つの良い手段である。

 

 

 

 

 

 

 

カテゴリー : 高分子

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