2017.01/28 高分子材料(18)
粒子に界面活性剤を吸着させてミセルとする方法は、ゴム会社で実験した時にうまくゆかなかった。しかし、転職してコアシェルラテックスの合成条件を見ていたら、実験で失敗した条件の中には、それがうまくいっている反応もあるかもしれないという期待感が高まった。
ゴム会社で検討していたときに使用していた界面活性剤は、すべて低分子かあるいはオリゴマー程度で、高分子活性剤の検討を数種類しかしていなかった。
また、ちょうど良いタイミングで三重大学川口先生の高分子吸着に関するレオロジー研究を拝聴し考え直すことができた。過去の経験と学会の講演、そして目の前に積み上げられた失敗のレポートがうまく調和し、ゾルをミセルにする方法として、コロイド溶液に分散している微粒子それぞれに、高分子活性剤をうまく巻き付ければ良いというアイデアが浮かんだ。
自分で実験してうまく巻き付けられるかどうかは自信が無かったが、シリカゾルを用いたコアシェルラテックスの合成で失敗した実験群の中には、そのような物質ができている、と仮定すると失敗をうまく説明できる事例が多かった。
すなわち、コアシェルラテックスだけを目標に考えているとその姿は見えないが、ゾルをミセルに用いたラテックス重合というコンセプトで心眼を働かせると、粒子一個一個に高分子活性剤が巻き付いていく姿が見えてきた、ということだ。
コーチングでは心眼で見えている状態を担当者に思い浮かべてもらうために、いくつか質問を投げかけた。担当者の中には馬鹿にする人もいたが、真剣に考えてくれた担当者が一人いて、会議室から飛び出し、数分後には、シリカゾルの中でうまくラテックスを重合できたフラスコを持って飛び込んできた。それは、コアシェルラテックスの重合に失敗した実験の一つだった。
高分子材料の開発では、教科書どおりに眺めていては問題解決できない場合がある。それは科学という制約の中で考えているからで、この制約を取り除いて高分子を紐と考えたモデルで素直に現象を眺めてみると解決できる事例が技術者人生で多かった。
また、思いついたアイデアで仮に実験がうまくゆかなかったとしてもあきらめてはいけない。そのような場合には、頭の隅にでも寝かせておくことが大切である。ひらめいたアイデアをすぐに捨ててしまう習慣の人は、このアイデアを寝かせる方法を実行すると新たなアイデア創出法を体得できる。詳細は弊社へ問い合わせてください。
カテゴリー : 高分子
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