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2017.02/03 高分子材料(23)

PPSは、ベンゼン環とイオウ原子とが交互にひも状につながった高分子である。そのフィルムは金属音がする。これは結晶相が多く弾性率が高いためだが、その結果靭性が低くなり少し傷がついただけでびりっと簡単に破れる。

 

高い弾性率のおかげで引っ張り強度はPETなどに比較して高いのだが、靭性は低い。このような脆いフィルムは、引張強度が高くても動的部品に使いにくい。

 

例えば、カラー複写機に使用されている中間転写ベルトは、高速で動く部品のため、一般に販売されているようなPPSフィルムでは、引張強度が高くても、すぐに切れてしまう。しかし、このフィルムの結晶化度を下げて非晶質相を多くなるように成形すると引張強度は下がるが靭性が改善され切れなくなる。

 

フィルムの靭性の尺度としてMIT値がある。これは同じところを何度も繰り返して折り曲げ、切れるまで何回折り曲げることができるのかを評価した値である。一般に販売されているPPSフィルムはこの値が1000未満と小さい。

 

特殊な成型方法でフィルム化すると非晶質相が増えてMIT値が3000前後まで改善される。ただし先に述べたように脆さは改善されるが非晶質化により弾性率が大きく低下し引張強度は30%以上下がる。

 

引張強度が低下してもMIT値がこのくらい改善されると印刷速度の遅い低価格のカラーレーザープリンターに使用できるようになる。すなわち動的部品では、引張強度よりも脆さ、靭性値が重要になってくる。さらに高速のカラーレーザープリンターに使用できるように、このPPSを改良するためにはどうしたらよいのか。これは明日説明する。

カテゴリー : 高分子

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