2017.02/12 高分子材料(31)
高分子材料で観察されるパーコレーション転移の現象も混練条件と関わり合いがある。パーコレーションは数学分野で古くから議論されていたが材料分野では1980年代まで複合則で現象を説明するのが常識だった。1990年代の学会の討論でも複合則は一部残っていた。
1979年にゴム会社で出会った指導社員は数学分野に秀でた人でパーコレーションの考え方を伝授してくださった。しかしゴム会社社内では複合則を用いた考え方が主流で研究部門でもパーコレーションを当時知っていた材料技術者は指導社員だけだった。
電子写真用の帯電ローラゴム開発で導電性が上がりすぎる問題が発端となりパーコレーションが研究所で重要視されるようになっていった。電気粘性流体のテーマもそれに一役買った。なぜならそれは電気粘性流体の機能発現で観察される現象そのもので、電場をかけたときにクラスターが生成する様子はまさにパーコレーション転移だったからだ。
その後写真会社に転職し、暇な時間を活用してパーコレーション転移のシミュレーションプログラムをC言語で作り、酸化錫ゾル帯電防止層の開発に使用した。そしてパーコレーション転移のクラスターが破壊する様子(後日説明する)など部下が日本化学会で講演し講演賞を受賞している。
今フィラー分散系高分子材料についてパーコレーションの考え方が常識となっているが、パーコレーションが数学者の間で議論されてから混合則にとって代わるまで20年近く時間がかかっている。フィラーによるクラスター生成はバインダーである高分子の性質に直接影響を受けるが、プロセス因子も同じぐらいに影響する。意外とこのあたりの勘所を理解していない人が多い。
カテゴリー : 高分子
pagetop