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2017.02/21 高分子材料(38)

この欄で紹介したことがあるPPSと6ナイロンの相溶した中間転写ベルト用コンパウンドについてもう少し詳しく書く。

 

このコンパウンドを外部のメーカーから購入し、押出成形を検討していた仕事を2005年に某部長から引き継いだ。その時の条件は、配合処方はそのままで業務を完成させてほしいという難題だった。

 

すなわちコンパウンドプロセスを検討する以外は、何もやるな、という希望である。その意図は明確で、表向きは商品化ステージであり、処方変更できない開発フェーズであるという理由であるが、これまでの業務をすべて正当化したまま業務を完成させろと言っているようなものだった。

 

失敗すれば引き継いだ自分が責任を負うことになる悲しい役回りである。サラリーマンの退職前にはこのような仕事が来たりする。

 

しかしこの業務はハッピーエンドで、当方に引き継ぎを申し出た部長はセンター長へ昇進し、当方は豊川の田舎における5年の単身赴任を終えて担当部長として東京へ戻ることができた、と過去に書いている。

 

この話で大切な点は、外部メーカーからコンパウンドを購入し中間転写ベルトを開発していた業務をそのままのスタイルで半年後に開発が成功している点である。

 

ただし開発に成功したときの外部メーカーは、6年間コンパウンドを供給してきたメーカーではなく、当方の所属した会社の子会社に代わっていた。

 

その子会社に樹脂の混練技術があったわけではなく、まったく基盤技術のない状態で、すなわち当方の知識だけでそこで樹脂専門メーカーより優れたコンパウンドを生産できるプロセスを開発できたのである。

 

高分子材料では、プロセシングというものをよく理解しているとこのようなあっと驚く開発が可能である。ただし、あっと驚くような開発では周囲の同意が得られないので仕事は自然な流れになるような、周囲から歓迎されるような、それでいて報われない大変な苦労を重ねた。

 

カテゴリー : 高分子

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