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2017.02/23 高分子材料(40)

PPSと6ナイロン、カーボンをある条件でバンバリー混練したときに、押出成形でウェルドの出ないコンパウンドができた。

 

そのプロセス条件は、バンバリーで混練しながら考えた条件である。すなわちバンバリーで混練しているときの温度やトルク変化、混練物の状態などを観察しながら手探りで条件を探し見出した。

 

まさに心眼を用いたKKDによる条件探索である。まったく科学的ではないこの方法でたった一つだけのプロセス条件を見出すことができた。一日で見いだせたのでタグチメソッドよりも効率が良い。

 

科学の知識という形式知と経験という暗黙知をうまく組み合わせて開発を進める手法はAIの時代にコンピューターに負けない唯一の手法である。もし形式知だけで研究開発を行っているならば、その研究開発組織はAIですべて置き換えることが可能で、あとは作業者がおればよい。

 

AIに負けないためには暗黙知を如何にうまく育て継承し成果に結びつけるというマネジメントが重要になる。このあたりのマネジメントノウハウは弊社にご相談いただきたいところだが、バンバリー混練のコンパウンドには、科学の知識を中心に非科学的手順でくみ上げた処方ゆえに致命的な問題があった。

 

このコンパウンドの高次構造は、PPSが海となり6ナイロンが島となる相分離構造である。そしてその島の面積から推定される割合よりも多い6ナイロンが添加されていた。

 

すなわちフローリーハギンズの理論では相溶しないはずの6ナイロンが相溶していたのだ。また、カーボンはすべて6ナイロン相に偏在し、PPSの海にはまったく存在しなかった。

 

それは、科学に反する現象と科学的に当たり前の現象とが共存する問題だった。一番大きな問題はカーボンが偏在している6ナイロンの島が大きく硬い(注)ために紙のように脆いベルトになったことである。

 

<注>面積比率からカーボンが分散している6ナイロン相の体積分率を計算することが可能である。カーボンは今回のプロセス温度280℃以下で絶対に溶けないので全量電子顕微鏡で見えているはずである。6ナイロンはフローリーハギンズの理論に反するがPPSに相溶する場合もありうる。このような考え方で、カーボンの分散するナイロン相を考察すると、カーボンが55vol%ナイロン相に分散している、との計算結果が出た。

 

カテゴリー : 高分子

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