2017.02/27 高分子材料(44)
PPSと6ナイロン、カーボンの3処方を混練し、外部のコンパウンダーよりも高性能で高品質のコンパウンドを製造する技術は、半年で完成したが、10年近く生産に使用されトラブル0である。
高分子材料の開発では、いくら時間をかけても、また科学的に開発を進めたとしてもうまくいかないことがある。これは、科学で解明されている事柄がいろいろ制約のついた現象に限られているからである。
科学論文の中には、その実験以外では成立しない現象を論じているものも存在する。これは高分子材料に限らずセラミックスでも同様である。すなわち科学としては正しくとも実務では役立たない論文である。
一方で、学会では評価されていなくても実務の観点では涙が出てくるくらい感動する論文に稀に出会う。このような時に著者が日本人であれば直接お会いして話を聞くことにしている。
高分子材料に関する研究報告では、自分の実験結果しか信じない、と言われた研究者もいるが、もっともな発言である。研究のための研究という論文を読むと脱力感さえ生まれる。
カオス混合技術は、科学の形式知だけでなく経験知と暗黙知を動員した成果である。また、高分子学会賞や経産省の補助金申請で幾度も落ちた世間で信じてもらえない非科学的技術でもある。しかし実際の生産で順調に稼働している。
このような技術はAIで作り出すことはできない。人間の手だけで初めて作り出される技術だ。すなわち、AIの時代の技術開発では、形式知だけでなく経験知や暗黙知を如何にうまく活用してゆくのかが差別化技術開発のために重要となってくる。
カテゴリー : 高分子
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