2017.03/04 高分子材料(48)
混練は剪断流動と伸張流動で進行し、ナノオーダーの高次構造制御には伸長流動が有効である、として考案された装置は伸長流動装置である。
ウトラッキーの発明によるこの装置の問題点は生産性が悪い点である。ウトラッキーのアイデアを参考に二軸混練機の先にお弁当箱ぐらいの装置をつけて行うのが当方の発明によるカオス混合装置である。
ウトラッキーのアイデアでは鋭利なスリットを通過する時に発生する伸張流動を利用して混練を進めようとした。
これに対して、当方の発明は平行なスリットに樹脂を流動させて、このスリット壁面近傍で発生する剪断流動と中央部の急激な伸長流動、そしてスリットの10倍以上の空間へ押し出されたときの樹脂の折れ曲がりを利用してカオス混合を行う仕組みである。
この平行スリットのアイデアは、乳化分散装置にも転用可能で、この特許が出願されてから、構造を特殊な形に設計した乳化分散装置の特許がいくつか公開されている。
平行スリットは、ややカーブをつけて非平行とすることにより、より機能しやすくなる。この発明も同時期に特許出願されている。量産には、非平行スリットが有利でその設計についてはご相談ください。加工業者も含め技術周辺情報を提供させていただきます。
カオス混合は、ゴム会社へ入社したときに指導社員から混練技術について伝承されたときに、それを実現するのが当方の宿題とされた。30年考えいくつか実現手段をメモっていたのが、PPSと6ナイロンの混練で役立った。
本来はゴム会社でその技術が生まれるはずだったが、当方は高純度SiCの事業化に邁進したためにしばらくそのアイデアを練る時間が無かった。しかし頭の中では十分に練りこまれ、混練の基盤技術のかけらもない写真会社で実用化する機会が訪れ、アイデアが具現化された。
非科学的な発明というものの面白さである。科学的な発明であれば、このような頭の中でアイデアを長時間寝かせている間に誰かが実行していた可能性が高い。ところがシンプルなスリット構造で混錬ができると科学的に考えられる人はいなかったと思われる。
カテゴリー : 高分子
pagetop