2017.03/05 高分子材料(49)
PPSの溶融状態については奇妙な現象が観察された。二枚の円盤に樹脂を挟み、粘弾性の温度変化を調べる実験を行ったときの体験。
樹脂を円盤に乗せて300℃の温度をかけて溶融する。溶融したことを確かめて温度を低下させながら粘度特性を観察した。このとき300℃における溶融時間を変えると異なる粘度特性のデータが得られたのだ。
すなわち、円盤の上で溶融状態になってもさらに長時間300℃で保持してやると、どんどん粘度が下がるのだ。みかけはそれほど変わっていないが、粘度特性だけ変化している。すなわち、未溶融状態の物質が存在しているかのような挙動を示す。
PPSと6ナイロンを二軸混練機で混錬したコンパウンドでも同様の現象が観察されるが、これがカオス混合を行ったコンパウンドでは観察されなくなる。
高分子学会賞の審査会でもこのデータを示したが、おかしなデータとされた。当方は、相溶が進行した結果の証拠として示したつもりだったが、6ナイロンとPPSの相溶はフローリーハギンズの理論では否定される現象だ。
科学で否定される現象のため信用されなかった、と言えばそれまでだが、その後コンサルティングで同様の実験を中国企業で確認させたが、やはり再現した。STAP細胞はその再現が難しく騒動になったがカオス混合の結果については再現性のある技術的結果である。
カテゴリー : 高分子
pagetop