2017.03/06 高分子材料(50)
昨日の粘弾性の実験でPPSという樹脂が300℃において溶融しにくいことを書いた。このことで溶融しても粘度が高く、さらに300℃で6ナイロンと混錬するときにそれらの粘度差が極めて大きいのではないかと容易に想像がつく。
2成分の高分子を混練するときに、粘度差が大きいと剪断流動では細かいサイズまで混錬できないことが知られている。また、混練の教科書を読むとそのような結果を示すグラフが伸長流動との比較で示されている。
一方カオス混合で得られたPPSと6ナイロンが相溶したコンパウンドは、300℃に設定された粘弾性試験機の中で容易に溶けて均一な融体となる。それは粘弾性試験をすれば容易に理解できる。
さらにPPSだけでは、290℃前後で動的粘度の上昇が起き始めるのに、6ナイロンが相溶したPPSでは260℃前後まで低粘度のまま均一の融体となっている。
このような粘弾性の観察結果から、PPSの融点より低い温度でも混練可能で、その時に混練がどのように進行してゆくのか思いめぐらすことが可能である。
もちろんこのような妄想は科学的ではない。科学的ではないが高分子材料の開発ではこのような妄想が新材料の創出やプロセシングの改善に役立ったりする。
現場を重視する技術者はこのような妄想を密かに行っている。このとき技術者の頭に描かれているのはひも状の高分子である。
カテゴリー : 高分子
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