2017.04/11 科学と技術の差異
科学の生まれる前の時代にも技術は存在した。この当たり前のことが1970年代の研究所ブームで忘れられたかのように、企業では科学的方法による研究が技術開発の全てと思われるマネジメントが行われた。
社会人のスタートはゴム会社の研究所だったが、この職場も同様だった。しかし、ゴム会社全体はKKDが技術開発の王道であり、新入社員研修では、それを職場研修を通じて学んだ。この時の職場研修にゴム会社の風土と異なる研究所が含まれていなかったのは当然だった。
そもそも科学とは技術開発のための道具であり、それをうまく使いこなすことが重要で、それを追及することが企業の目的ではないはずだ(注)。科学的真理は、誰がどこで実施しても成立しなければならず、またその真理は強固な論理的検証に耐えられなければいけない。
換言すれば、科学で理解できることあるいはできることは、誰でも論理的にたどればそこにたどり着ける。だから科学に裏付けられた差別化技術というものは簡単にリベールされやすいのである。
ところが、科学では説明できないが、技術としてどのような市場においても再現性良く機能する商品をリベールするとなると大変に難しい。例えば高分子科学はこの30年急激に進歩したが、それ以前のタイヤ産業は高い技術障壁が存在した。
(注)技術開発の結果、科学を高めることに貢献している姿が企業の研究所のあるべき姿である。技術開発の成果の一部を研究して学会で発表するなり担当者に学位をとらせるなりすれば良い。企業は他社と差別化できる技術こそ開発しなければいけない。その技術基盤を創造活動により新たなパラダイムとして提案するのが研究所の役目である。
カテゴリー : 一般
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