2017.04/29 オーディオ商品(4)
クラシックギターが昔ながらの構造と形をそのままにして作られているのに対し、スチール弦ギターは今も改良が行われ、新作が登場している。例えば主要なフォークギターいわゆるアコースティックギターの構造は、どのメーカーから販売されているギターも同じような材料で同じような作りになっているが、40年前ドレッドノートタイプが大半だったデザインは多種多様になってきた。
アコースティックギターは、弦がスチール、ボディーの振動する板はスプルースなどの松や杉の仲間の材料を薄くしその裏に力木を配置した複合構造でできている。またボディーを頑丈に作るために振動板以外はローズウッドやハカランダなどの堅い木が使われ、ネックはマホガニー材とほぼ決まっている。
この材料構成の基になったのはアメリカのマーティンギターで、1970年代のフォークギターでよく売れていたのはデザインまで真似たフルコピー版である。だからどこのメーカーのフォークギターも同じような音の傾向だったが、振動する表板が合板であるか単板であるかの違いにより響き方、音色が少し異なっていた。
そのなかでマーティンギターに最も近くマーティンギターよりも美しい響きがする、と話題になったのはS-ヤイリギターで、全ての商品が手工で表板には単板のスプルースが使用されていた。当時安価なギターならば1万円程度で購入できたが、このS-ヤイリギターは4万円以上の商品しか供給していなかった。
また、マホガニーのネックにアジャスターロッドが使われていなかったことも話題になっていた。すなわち材料の管理が優れているのでアジャスターロッドが無くてもネックが永久に変形しないなど、とにかくS-ヤイリは多数あったフォークギターメーカーの中で別格の扱いを受けていた。
このマーティンギターのフルコピーが主流を占めていた時代に差別化を行ったその他のメーカーはヤマハとアリアで、ヤマハは科学的に音の解析を行い独自のボディー形状と力木の構造のLシリーズというギターをヒットさせた。それに対しアリアはクラシックギターの名工松岡良治にフォークギター製作を依頼し、アリアブランドを高めていった。
松岡良治氏によるフォークギターも形状こそマーティン社のコピーだったが、ヘッドが一枚板ではなくクラシックギターと同様に2枚重ねの削りだしだったり、外から見えない力木の仕上げとその構造が美しかったり、サウンドホールの飾りが木の寄せ木造りで工夫されていたりと細かい技術がマーティンギターと異なり、その結果S-ヤイリ同様に音の響きが大変美しいギターとして評判になった。
ただし形状こそマーティンドレッドノートを真似ていたが、そのフルコピーではなかったので、あのマーティンギター独特な腹に響くような低音が出なかった。1970年代のギター雑誌には、デザインや使われている材料が同じでドングリの背比べ状態だった多くのギターメーカーの中でヤマハとアリア、S-ヤイリの話題がよく取り上げられていた。
カテゴリー : 一般
pagetop