2017.05/13 科学は技術開発の道具(6)
カオス混合について新入社員時代にその概念を教えられた。そのとき究極の混練であればいかなる高分子の組み合わせでも相溶状態となるかもしれない、と聞かされた。ただしこれはフローリーハギンズの理論に反する想像だ。
そもそも混練をどこまで行えば完璧に混練できた、あるいは混練が完了した(注)といえるのか、これさえも混練時に高粘度の融体となる高分子では科学的研究を行うことさえ難しい。
一次構造が異なる二種の高分子をブレンドすると必ず相分離する。これは有名なフローリーハギンズ理論で説明される現象である。この理論ではχが正の高分子の組み合わせは相分離するとされている。χは自由エネルギーのようなものなので平衡状態では相分離状態が安定となるが、非平衡状態ではどうなるかわからない。
ただ、混練したときに分子レベルまで混ぜにくいことは科学的に予想される。その他起こりうる現象をいろいろ科学の世界で考えていると、カオス混合のシステムを考案できたとしてもそれを証明するのも難しいことが分かってくる(否定証明は適当な実験を行えば簡単にできる)。
ここまで考えると、まずχが十分に大きいブレンドシステムで分子レベルで均一にでき、そうしてできあがった混合物を相分離しないように取り出す方法が一つの問題として頭に浮かぶ。考えられる方法として二種の高分子を反応させて取り出す方法や相溶したところでTg以下に急冷し分子運動を凍結したまま取り出す方法などが心眼で見えてくる(昨日までのこの欄を全部読んでいただきたい)。
(注)光学用ポリオレフィン樹脂を使用してこの問題について考えたことがある。ご興味のある方は問い合わせていただきたい。
カテゴリー : 一般
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