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2017.05/31 科学は技術開発の道具(12)

モノ創りのプロセスで試行錯誤は科学の訓練を受けていなくてもできる、と思われがちだが、試行錯誤ぐらい難しい方法は無い。猿やカラスが行う程度の試行錯誤ならだれでもできるかもしれないが、現代の人間の試行錯誤は科学を道具としてうまく使えなければならないので、これは少しOJTが必要である。

 

このような試行錯誤が訓練を必要としても、すべての条件を手あたり次第実験する方法ならば試行錯誤法のなかでも易しい。すべての条件を実験するのが大変だというならばラテン方格を用いればよい。ラテン方格を用いるとすべての条件の一部実施となるが、統計学上すべての条件をみていることになる。

 

これを科学的に行うのが実験計画法であり、タグチメソッドである。ただしラテン方格を用いるので同じように見えるが、実験計画法とタグチメソッドは全く異なる。実験計画法は統計手法だが、タグチメソッドは統計手法ではない。タグチメソッドでは、すべての条件の一部実施を実現するためにラテン方格を使用しているに過ぎない。

 

1980年前後は、まだ日科技連すなわちのQC手法が問題解決の主流で、実験計画法も企業の研究開発で使われていた。当方も実験計画法を頻繁に用いたが困った問題に悩まされていた。すなわち実験計画法で求められた結果が最適条件からよく外れるのだ。QCの先生が妙な等高線図を描き、外れる理由を科学的に説明してくれてもどうも怪しい。

 

ある日実験計画法と相関係数を組み合わせて用いてみた。すなわち相関係数の最大値が得られる条件を実験計画法で求めたのだ。ドンピシャで最適条件が求められた。それ以後実験計画法では、実測値をそのまま用いるのではなく相関係数を採用していた。不思議なことにこの方法で最適条件が外れなくなった。

 

この方法ではタグチメソッドでいうところの感度が最大になる条件を求めていたことになる。このようなことを若い時に体験していたので、タグチメソッドの外側因子という概念をすぐに理解できた。また当方は相関係数をラテン方格に組み入れて喜んでいただけだったが、同じ頃、海の向こうでタグチメソッドの普及に尽力されていた故田口先生と講演でお会いして凄い先生だとすぐに実感できた。

 

ただ、故田口先生がタグチメソッドを一生懸命科学の体系で説明しようとされていたのには少し失望した。タグチメソッドは科学である必要はなく、技術開発の一つのプロセスとして体系を組み立ててもよかったように思っている。

 

先生の著書には科学的に説明しようとされたご苦労が随所に現れているが、「この場合には、こうしろ」といったノウハウ的な教科書の方が技術者には読みやすい。

カテゴリー : 一般

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