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2017.06/07 産学連携における問題(1)

先週末土曜日の山本先生のご講演のタイトルは「破壊的イノベーションと触媒化学(日本の強みと弱み)」であり、アカデミアのお立場から研究の意味と構造、その構造を踏まえて市場にGame Changingを促す破壊的イノベーションをどのように起こすのかをご自分の体験から説明された。

 

その中で産学連携における企業側への注文として、真のボトルネックとなる課題をアカデミアに提示して欲しいと語られた。また、大学の真の役割はCreating Shared Value であり、企業固有の内的テーマを持ってこられても困る(ここまでの強い言葉では言われていないが---)と申されていた。

 

当方が12年間在籍したゴム会社は、産学連携で成功体験のある会社だった。BR01と呼ばれる合成ゴムを京都大の「基礎」研究を基にした共同研究(「応用」研究)で開発し実用化している。そして、半官半民の合成ゴム会社を設立し、この会社も世界的な合成ゴム会社に育てている。すなわち京都大学古川教授は、新しい有機金属触媒で高分子重合プロセス分野に山本尚先生の言われた破壊的イノベーションを起こされたのである。

 

これらは創業者の力量による成果である。もちろん事業成功のために関わった方々の努力も大きいが、このBR01成功の前に、大阪工業試験所の「基礎」研究へ無条件大規模寄付を行ったりしていた伝説を聞き、産学連携における経営者の役割は大きいと感じている。ちなみにこの寄付の話は、無機材質研究所所長から伺った話で創業者の伝記には書かれていない。

 

世界的なゴム会社を育てた創業者は経営者としての能力以外に、先の無機材質研究所長の話によれば、アカデミアに対する造詣も深く、産学連携に熱心だったという。

 

創業者の実績のおかげで、セラミックスフィーバーのさなか門外漢の素人の留学が難しい無機材質研究所へ、ゴム会社の一社員が入所することができた。ちなみに当時の無機材質研究所にはセラミックスメーカーからの留学生が定員以上に在籍しており、満員御礼状態だった。

 

当方はSiCの研究グループを希望していたが、そのグループでは2年先まで留学生の予定が詰まっていた。しかし、ゴム会社の産学連携におけるアカデミアへの貢献実績から特別に留学を許可されたのだった。ただし、条件として企業からのテーマの持ち込みは禁止されており、無機材質研究所のテーマをお手伝いすることが前提にあった。すなわちポリエチルシリケートとフェノール樹脂の透明な前駆体を原料とした高純度SiCの研究は留学終了後ゴム会社で行う、という条件になっていた。

 

この条件で当方が最初に担当したのは、SiC単結晶の異方性に関する研究で、小生は半年間にSiC単結晶に異方性ができるスタッキングをシミュレーションするプログラム作成や2H単結晶の3Cへの転移その場観察、6H単結晶の転移のその場観察、窒化ケイ素単結晶の熱膨張その場観察で成果を出している。これらを短期で実績を出したので明日の話につながっている。特に2200℃まで単結晶を安定に固定できる接着技術を開発した功績を褒めていただいた。

 

 

カテゴリー : 一般

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