2017.06/11 産学連携
山本先生は、アカデミアの研究構造として純正研究(第一象限)、応用研究(第二象限)、末梢研究(第三象限)、基礎研究(第四象限)を示し、アカデミアの純正研究を支える基礎研究から応用研究を進めることでイノベーションを起こすことが可能、と述べられた。
すなわち産学連携もそのような進め方をするべきで、企業から真のボトルネックとなるようなテーマをアカデミアが待っていてもうまくゆかず、アカデミアから基礎研究を分かりやすく説明しながら積極的に企業へ働きかけなければいけない。
すなわち山本先生や無機材質研究所が実践されたようなアカデミアの基礎研究をベースに産業界の製品開発をサポートして進めていくような活動が、健全な産学連携の姿のような気がしている。
過去におけるゴム会社のBR01と呼ばれる合成ゴム技術もそうであったし、高純度SiCの技術についても、合成技術そのものは当方のアイデアにより生まれたが、それを焼結体まで仕上げる技術は無機材質研究所の基礎研究がベースになっている。またそれを積極的に推進してくださったのも無機材質研究所である。
外部からゴム会社における高純度SiCの事業を眺めているとそのようなアカデミアの貢献は学会賞の出来事が示すように隠されてしまった。しかし事業は30年続き、無機材研の基礎研究の実として残っている。問題は、それが企業から社会に示されていなくてもアカデミアの研究者が満足できるかどうかだろう。
国の研究所として無機材質研究所のすばらしさは、その後お世話になった先生からいただいた手紙や直接の行為からも示すことができるが、それの紹介は別の機会としたい。読んでいて涙が出てきた手紙もある。産学連携がうまく成功したときには、利害を超えたアカデミアと実業界の交流が生まれる。無機材質研究所長がゴム会社の創業者の伝説を話してくださったように、である。アカデミアの人が産業界に基礎を提供して事業として成功したらそれに感謝することができて伝説として残ってゆく、そんな産学連携が理想だろう。そのためには企業の誠実で真摯な活動が前提となる。
カテゴリー : 一般
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