2017.06/12 開発を完了してから研究を行う
企業の技術開発において、科学はあくまでも道具である。この認識は重要だと思う。ゴム会社においても、写真会社においてもそれぞれで成果を出すにあたり、大半の成果は非科学的なプロセスでまずモノを創り出し、それを周囲に説明する時に、科学的プロセスで実施したかのようなプレゼンテーションを行ってきた。
これは欺瞞的行為ではない。いわゆる科学の時代の忖度による技術開発である。「科学こそ技術開発を成功に導く」という風土において、非科学的成果が如何に優れていても受け入れてもらえないことはゴム会社の研究所において経験してきた。
しかし、退職し中国のローカル企業で独自のプロセスによる指導を行い成果が出る状況を見るにつけ、企業で研究開発を進めるときに科学的プロセスに拘る必要はないと確信した。科学で解明されていないことは分かっていないこととして放置してもモノができるのだ。
すなわち、技術開発を行うときに科学的プロセスに拘らず、非科学的プロセスも取り入れて縦横無尽に開発を推進した方が開発スピードは明らかに速い。
タグチメソッドにしても科学で理解しようとすると難解になるが、非科学的プロセスの中で単なるメソッドとして扱うと理解しやすい。そして開発に成功してから、その成果について科学的プロセスで研究を行い、普遍の真理を明らかにしてそれを非科学的成果とともに伝承するのである。例えば、この手順で行った高純度SiCの技術は、ゴム会社で30年以上事業として継続されている。
<科学は人類にとって重要な哲学の「一つ」である>
科学は自然を理解するときの人類共通の哲学である。科学的プロセスで得られた真理は人類に「真理」として容易に共有化される。一方で科学の真理として確定した現象の理解を否定することは難しい。ゆえに理学に対して工学では非科学も扱うべきである。複雑系の科学という言葉があるが、技術の中には複雑な状態をブラックボックスとして実用化している事例が多い。科学が一つの哲学であるならば非科学もアカデミアで扱っても良いと思う。むしろアカデミアでは積極的に非科学を扱い、工学の中におけるそのあるべき姿を追求すべきではないか。科学だけでは、現象から新たな機能を取り出すことができない時代である。
カテゴリー : 一般
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