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2017.06/24 事例(1)の続き

この中間転写ベルトの研究開発は、数年にわたりステージゲート法と類似手法で、研究開発の各段階をチェックしながら進められてきた(注)。ゆえに押出成形技術はコンパウンドメーカーが言っていたような欠陥技術ではなく、コンパウンドの問題を吸収できるほどの技術まで進んでいた。

 

実際に、コンパウンドのカーボン分散状態と押し出されたベルトのカーボン分散状態では、大きく異なっていた。またベルトの各位置のカーボンの分散状態も異なっており、これを押し出し成形である程度調整できるようになっていた。この調整技術がもう少しで完成する、というシナリオで当方に業務が引き継がれたのだが、これは、押出成形技術としてやりすぎである。さらに、ゴールが近くに見えていても、そこには底なしの谷が存在するような状態である。

 

昔、ゴム会社に入社したときの工場実習で現場の職長から伝承していただいた押出成形技術は、大変理にかなった考え方だった。すなわち、押出成形プロセスでは、賦形だけに徹して高分子の高次構造はコンパウンド段階で完成させておくのが鉄則という考え方である。

 

この職長は、押出成形を10数年担当していたという。10数年悪戦苦闘した結果たどり着いたのがこの考え方だそうだ。彼の言葉で表現すると、「押出成形プロセスは、いってこい」の世界だそうだ。

 

ダメなコンパウンドを押し出すと、ダメな成形体しかできないという。しかし、カメラメーカーでは、ダメなコンパウンドを用いても押し出して良好な成形体を作ろうとする努力をしていた。

 

このような姿勢だったからコンパウンドメーカーの技術者はあぐらをかいてコンパウンディングの問題を解決しようとしていなかった。当方がこの仕事を担当したとき、コンパウンドメーカーの技術者に言われたようにド素人だった。ド素人ではあったが、ゴム会社の職長から伝承された技に関する知識を持っていた。

 

はじめて中間転写ベルトを担当したときにあいさつ代わりに日本の一流コンパウンドメーカーの工場を見学したが、ゴム会社のそれと比較して赤ん坊のような状態だった。日本の樹脂メーカーはゴム会社の高度なコンパウンド技術を知らないように思われた。

 

樹脂のコンパウンディングについてはド素人だったが、ゴムのコンパウンディングについては、天才肌の指導社員のもとで3ケ月過重労働で鍛えた技を持っていた。まさに赤子の手をひねるがごとく、コンパウンド工場を素人3人で、しかも中古機械を集めてたったの3ケ月で立ち上げた。

 

そこで生産されたコンパウンドは、日本の一流コンパウンドメーカーで到達できなかったレベルだった。技術開発は長時間かかる分野もあれば、瞬間芸の如くできてしまう分野もある。科学で未解明でもその周辺の技術が確立されていれば、アジャイル開発が適している。

 

(注)開発段階のチェック時にコンパウンディング部分はブラックボックスとして扱われていた。すなわち一流コンパウンディングメーカーに絶大なる信頼を置いていたのだ。

カテゴリー : 一般 高分子

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