2017.07/02 科学により開発された技術
木曜日から昨日まで高分子材料自由討論会に出席していた。この会はいわゆるクローズドセミナーの色彩もあり、あまりこの欄で内容を公開するのはお金を払って出席された企業の方に失礼になる。
しかしこの二泊3日の討論会の特徴である夜の自由討論で公開しても差し支えない、というよりも公開して世間に問題提起したほうがよい話題があったので紹介する。
N先生が指摘され、当方も以前より気になっていたことだが、科学で解明された分野の事業の終焉である。N先生は終焉とまでは表現されなかったが、金属や半導体分野の企業が凋落してゆく昨今の状況は終焉と表現しても間違いないのでは、と思っている。
すでに他の方も言われていることだが、金属や固体物理の科学は20世紀にかなり進歩し、ほぼその体系が確立した。この科学の体系が完成した事業分野の日本企業は新興国の追い上げで今苦境にあえいでいる。
一方高分子分野では、高分子物理の研究者が頑張っており、その科学的体系を構築しようとしている。しかし、半導体分野のように容易ではない。
そのおかげで当方が12年在職したゴム会社はまだ成長し続けている。ゴム材料技術について、階層構造で考える体系が見えてきたとはいえ、科学で解明されているところはほんの一部の現象だけでありいまだにノウハウの領域が多い。これが高い参入障壁になっているのだ。
20世紀に科学が進歩したおかげで企業の技術開発は急速の進歩をしたが、科学の知識だけで成立する技術は、その分野の知識労働者さえ集めれば、どこでもすぐに事業を始めることが可能である。
また、仮にノウハウを詰め込んでブラックボックス化できたとしても、科学の体系が確立されているならば、そのリベールも容易である。中国に追い上げられ抜かれてもおかしくないのだ。中国の知識労働者には日本人よりも優秀な人材が育ってきている。
今日本の企業が行わなければいけないのは、アカデミア同様の科学による研究ではなく、科学で解明されていない分野から機能を取り出す技術開発である。
そして、20世紀の研究所ブーム以来多くの企業が行ってきたような研究開発は、アカデミアへアウトソーシングしたほうがよい。21世紀に入り以前にもまして産学連携が重要になってきた。日本企業は現象から機能を取り出す技術開発を重視すべきである。中国ローカル企業経営者にはこの考え方が支持されている。
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