2017.07/09 アイデアを出す一つのコツ(1)
高校数学で学ぶ証明問題の解答に必要条件と十分条件で論理を明示的に展開しないと×になる問題がある。実は「=」が必要十分な関係を示しているので,数学や算数の問題は必要十分関係を議論している。ゆえに推論に向きがあることを高校を卒業した人ならば誰でも知っているはずなのだが、卒業すると忘れてしまうようだ。
それは日常の思考や科学で現象を考えるときに無意識に必要条件から考える癖が身についているためと思われる。いわゆる科学で脳みそが習慣ずけられた結果である。ただしこの前向きで推論を進める癖は簡単に矯正できる。ただ現象の結果から考えれば良いだけだからだ。すなわち現象の結果や結論を明確にして逆向きに推論を進める習慣をつける。
この逆向きに推論を進める方法は、アイデアを出すコツでもある。また、単に論理問題を解く時だけでなく、人生の問題を考えるときにもこの方法は有効であるが、人生についてはとりあえずここでは扱わず、日々の開発で生じる問題について考えてみる。
今は目標管理が一般に行われているので日々の仕事のゴールは明確なはずだ。新しい開発課題を担当したときに、その目標を明確に記述する作業を日常行う。しかし何故か日常遭遇する問題について、まずその答えを明確にするという作業を行わない。写真会社で問題を前にして困っている担当者にまず答えを考えてみよ、と言ったら、それが分からないから困っているんです、としたり顔でいう。
それでは、君の今期のゴールは何か、と尋ねると答えは返ってくる。そのゴールと現在の目の前の問題とを関係させて考えればおのずと答えは明らかだろう、というと、これは今期の目標と関係ない現象です、と平然と答えてくる。さらにこの担当者とやりとりが進むわけだが、目の前で起きている現象の科学的答えを知ることが仕事だと勘違いしている。
会社の開発テーマでは、そこで扱う自然現象について科学的な真理を求める作業よりも商品化できるかどうかが最も重要なはずだが、それを忘れているケースが多い。仮に科学的真理が何も明らかになっていなくても商品化が成功している例は多い。
PPS/6ナイロン系中間転写ベルトの商品化では、その相溶が起きた結果どうなるかと考えず、カーボンの分散を安定化させるためには6ナイロンがPPSに相溶していなくてはいけない、と、それが完成した姿から物事を考えていた。そしてそれが実現され中間転写ベルトを商品化できたのだが、なに一つ科学的真理は明らかになっていなかった。
カテゴリー : 一般
pagetop