2017.07/20 科学が正解を出してくれない
昨日のレンズのように、趣味の世界あるいは人間の感性でその評価が決まる商品では、科学の真理が必ずしも正解とはならない。すなわち人間の営みとしての技術により正解を求めなければならない世界だ。
いまやレンズ設計はコンピューターシミュレーションで光学性能を造りこむことが可能と言われている。ゆえにタムロンやシグマ、トキナーなどのサードパーティーから安価で性能の優れた互換レンズが出てきている。
韓国製サムヤンは新参のレンズメーカーでそこそこの高性能であるが、最近の日本のサードパーティーメーカー製レンズのボケ味に特徴を持たせてきているレンズに比較すると明らかに商品性能は劣る。そしてカメラ関係の雑誌ではこのあたりの新製品に関する商品テストが格好の記事ネタになっている。
あこがれのカールツアイスレンズは、コシナーで製造されているので、日本はレンズ大国である。そしてこのカールツアイスレンズさえも科学の正解を採用していないいわゆる味のあるレンズと雑誌記事にある。
写真が二次元に描かれた絵に過ぎないのに立体的に見え、その絵に表現をもたらせるのに必要なレンズ性能の一つはボケであるが、これは科学的に正解を導き出すことができない、と言われている。
レンズは焦点が合ったときの性能で設計されるからだ。よく知られているように光の波長によりガラスの屈折は異なり、すべての色を一点で合焦させることは難しい。非球面レンズなどの技術が開発されている理由だが、この合焦させたときの性能でレンズを自由に設計することは、科学的にほぼ可能だ。
それにもかかわらず、カールツアイスも含めた日本のレンズメーカーの商品は合焦時の性能は最高であると同時に各社差別化され、個性豊かなレンズが販売されている。
焦点がぴったり合っていると思わせるカリカリの写りのためプロの報道カメラマンに好まれるニコン(注)が必ずしも科学的に正解のレンズを販売しているのではなく、ましてや世界最高のレンズと枕詞がつけられたりするカールツアイスレンズが価格通りの性能のレンズではないのだ。
カールツアイスレンズが高いのはあの値段でも購入する人がいるからだ。ペンタックスは昔からそのレンズ性能に特徴があり、ポートレートを撮影すると独特の写真が撮れる。気に入ればカールツアイスレンズなどばかばかしくて買えない。レンズは科学だけで正解を導き出せない世界の一例である。
(注)最近ニコンは独自コンセプトの技術でボケ味をふわふわトロトロで何とも言えない味わいのレンズを2本出してきた。その写りは、雑誌で作例を比較してもわかる個性である。ただしカールツアイス並みの値段でうんざりしている。
カテゴリー : 一般
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