2017.07/28 アブラミの指数(2)
フェノール樹脂とポリエチルシリケートのリアクティブブレンドから製造された前駆体高分子を炭化すると、シリカとカーボンが分子レベルで均一に混合された前駆体ができる。これを非酸化性雰囲気1600℃以上で熱処理すれば、SiCを合成できる(シリカ還元法)が、ここでシリカとカーボンとの均一素反応の取り扱いができる原料となっている点が学術的に重要である。
シリカ還元法について、その反応機構すなわちシリカが還元されてSiC結晶に成長して行く過程について、1980年当時諸説が乱立していた。
これはSiC化の反応に用いる原料が不均一なために、中間生成物と思われるSiOが揮発して様々な反応挙動を示しているためだ。また、シリカ還元法で生成されるSiCは立方晶系の結晶のはずだが、2Hタイプのウィスカーが副生成物として得られる問題が実用的にも学術的にも話題になっていた。
早い話が、技術的にも科学的にもシリカ還元法のあるべき姿が見えていなかった、という言い方ができる。ちなみにシリカ還元法のあるべき姿は、シリカとカーボンが反応し立方晶のSiCを100%生成できるプロセスであり、これを実現するためには、シリカとカーボンが分子レベルで均一に分散している原料が必要だった。
すなわち、不純物となるウィスカーや未反応のカーボンをを含まないSiCを製造するためにも、SiCの生成機構の真理を追究するためにも,フェノール樹脂とポリエチルシリケートとのリアクティブブレンド技術の開発は必要だった。
このあるべき姿を実現した原料と超高温熱重量天秤を用いて1500℃以上で恒温測定を行うと、SiOの揮発によるノイズが極めて小さくCOの発生だけを重量減としてモニターできる。
1500℃以上の様々な温度で得られた、時間を横軸にした重量減少曲線を反応速度論に基づき考察すると、その曲線には明確な反応開始の核発生誘導期間が存在する。
これは反応初期に反応速度が最大になるシリカ粉末と炭素粉末との不均一反応の場合と大きく異なる。また不均一反応では、シリカあるいは炭素粉末の表面で反応が進行すると言われている。
すなわち、得られた実験結果は均一固相反応のアブラミの式で解析可能な結果であることを想像でき、実際にデータを速度論の手順で処理するとnは1.5と見積もられた。
また、得られた粉末はβSiC単相の結晶粉末なのでSiCの核が立体的に成長したことが理解され、核成長の次元λは3で反応ステップ数βは0と求められる。
すなわち、拡散律速成長であり、SiCの結晶成長が、瞬間的に核生成するや否や拡散律速で3次元的に成長している機構であることがわかった。
シリカ還元法で様々な反応機構が提案されているのは、副反応であるSiOガスが発生し、このシリカとカーボンの理想的に進行した機構からはずれるためであることも想像できた。
カテゴリー : 高分子
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