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2017.07/30 アブラミの指数(4)

無機材料の結晶成長過程は比較的イメージしやすいが、高分子の結晶化過程はいささか不気味である。真夏の夜それをイメージすると少し涼しくなるくらいである。今は値段が高くなってしまい、あまり見ることができないが、昔魚屋の店頭にバケツに入った多数のウナギがこの時期並べてあった。

 

ウナギはアジなどと同じ扱いだった。3年前中国の海辺町シャントウでも同様の光景を見ることができ、子供の頃を懐かしく思い出した。しかし中国のウナギは頭の形が少し異なっていたので、不気味さは子供の頃よりも増した。

 

狭いバケツの中に十匹以上のウナギがうごめいている様子は、さながら高分子の融体からの核生成の様子に似ている、といってもこれは当方の勝手な妄想である。教科書にはもう少し美しい物語が描かれている。

 

すなわち折りたたまれた1本の高分子鎖の塊が核となり、そこへさらに高分子が折りたたまれながら集まり、ラメラへ成長する様子が描かれている。その時ねじれが生じると球晶に成長してゆく。静置された融体からの結晶では球晶ができる。

 

ポリエチレンの結晶成長はかなりよく研究されており、まさにこのような機構で進んでいるような解析結果を論文で読むことができる。すなわち溶融状態で高分子鎖は自らが運動して折れ曲がることにより自由エネルギーを下げているのだ。たいへんわかりやすい説明である。

 

しかし、レピュテーションモデルの話を聞くと実際の結晶化は教科書に書いてあるような美しい話ではないだろうと思う。まさにウナギの塊が蠢いて集団の中の自分の居場所を探しているような動きの中で、自分自身で体を折り曲げたほうが安定と思いながら固まってゆく。想像すると不気味で気持ち悪い。

 

ウナギでは少し短いのでは、と思われる人は大蛇が100匹ほど塊になって蠢いている様子を思い描くと、体の模様の効果もありさらに涼しくなる。マクスウェルの悪魔になって、側鎖基の運動の様子を加えると恐怖になるかもしれない。

カテゴリー : 高分子

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