2017.08/26 技術開発の方法(4)
電気粘性流体をゴムに封入するデバイスの検討がなされたときに、ゴムに添加されていた成分が電気粘性流体のオイルに抽出され、デバイスが機能しなくなるという問題が発生した。
この問題では、「なぜ、電気粘性流体が機能しなくなるのか」や「なぜ、ゴムの添加物が電気粘性流体に出てくるのか」など、「なぜ」という問題について科学的に解明するために工学博士や理学博士、高偏差値大学の修士など多くの優秀な人員により1年という研究期間が費やされた。
その結果、電気粘性流体の増粘メカニズムと界面活性剤ではこの問題が解決できないので、ゴムからすべての配合試薬を抜いてもゴムとして機能する弾性体を開発しなければいけない、という結論が出されている。そして、高純度SiCの事業を住友金属のJVとしてスタートしたばかりの当方に応援の依頼が来た。
JVは、当方一人で推進していたので、この依頼は大変迷惑な話だったが、テーマの重要度を錦の御旗に掲げて、JVを中断してでも手伝え、と言われた。
ところが、この時のJVがきっかけで高純度SiCの事業は現在まで30年近く継続しているのだが、電気粘性流体のテーマは当方が転職後、満足な事業に育たずつぶれている。
技術の視点で考えると常識はずれな内容が重要テーマで、外部とJVをスタートしたばかりのスジの良いテーマはとるに足らないテーマ、と評価されたことに腹が立ったが、サラリーマンゆえに手伝うことになった。
技術開発のマネジメントを科学の視点だけで行うと、このようなばかげた重要度づけがなされる。企業では事業として動き始めたテーマが重要なはずだが、世界でも研究例がない技術で起きた問題を科学で完璧に解いたから、ものすごい技術だ、という誤解は、技術というものを正しく理解していない経営者が行いがちである。
カテゴリー : 一般
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