2017.08/31 科学で対応できない問題
昨日サイエンス&テクノロジー主催で開催された二軸押出機に関する講演会を一日聴講してきた。講師が元神戸製鋼の技術者橋爪真治氏ということで参加したのだが、この道50年の技術者の講演として面白かった。
技術に対する思想は当方とよく似ていた。すなわち、スケールアップが難しい二軸混練機の問題を経験知をもとにうまく説明されており、大変参考になった。このスケールアップの考え方は、講師独自の方法であるが、当方が写真会社で立ち上げたコンパウンド工場(注)で用いた考え方を説明できる内容だった。
講師によれば、実験室の検討結果をスケールアップする考え方は、欧州と米国で異なり、日本は欧州方式に近いという。欧州方式とは、とにかく理論解析、計算が中心で、スケールアップの検討を行い開発するというものだそうだ。ところが、二軸混練機についてはこの方法では不可能であることが証明されたという。
すなわち、形式知だけでスケールアップができない分野ということが証明されたのだ。しかし、日本では今でも形式知が重要と一生懸命やっている企業もある、と言われていた。
それでは、米国方式とはどのようなものかというと、科学で解明できない部分はブラックボックスとして、分散品質を実現する方程式を無理やり作る方法と説明された。すなわちブラックボックス化された現象に働く要因と分散品質との関係が一般化できればそれでスケールアップするという方法である。
これはこの活動報告でも述べている経験知による方法ともいえる。一般式が仮に科学的に説明できなくても、それが有効に使えればそれでよし、という米国方式は、米国の繁栄を見れば合理的であり、日本人も見習うべきともいわれていた。思わず首を縦に振ってうなづいてしまった。
自己満足のために講演会に参加したのではなく、自己研鑽のためだったが、首の運動のために参加したような状態だった。当方は、自信のある分野でも謙虚にこれぞと思われる講演に出かけるようにしているが、これだけ首のつかれた講演は久しぶりだった。
(注)某有名ゼネコンに見積もって頂いたら数億円となったので、中古機を探し、根津にある中小企業小平製作所と一緒に立ち上げたら1億円未満で実験室スケールの30倍規模の工場を建設することができた。この時実験室で使用した二軸混練機とスクリューセグメントとL/Dを揃えた中古機とカオス混合装置の構成は同一にしてタグチメソッドを用いている。ただどのように用いたかはご興味のある方はご相談ください。
カテゴリー : 一般
pagetop