2017.09/05 技術開発の方法(11)
樹脂補強ゴムの開発を担当したときには、オブジェクト指向など知らなかったが、QC手法を新入社員研修で学んでいた。すなわち日科技連のQC手法による業務解析は当時の流行だったが、研究所ではこの手法を馬鹿にしていた。研究所では科学の方法がすべてに優先していた。
ただし科学の方法では技術開発の効率が悪いだけでなく、モノができないこともある。当方がお手伝いをする前の電気粘性流体の増粘問題における仕事の進め方は、まさにその典型例だった。
当方は増粘問題の解決だけでなく、実用化された傾斜機能粉体の開発まで0.5工数でお手伝いを命じられてから半年の間に成し遂げている(特許が公開されている。この粉体以外に電気粘性効果が大きい新規構造粉体について開発し、特許出願している。この3部作は少し有名で転職後セミナー講師を依頼されたが、時期尚早とお断りしている。)。
もちろん住友金属工業とのJVも、たった一人で業務を進めた。(これは30年後の現在も事業として継続されているが電気粘性流体の事業は当方が転職後無くなっている。研究開発を事業化するコツは、売り上げを見込める盤石な出口を確保しておくことである。)。
ところで、この問題解決の業務を担当したときには、オブジェクト指向をマスターしC++でプログラミングをはじめたときだった。ただ、当時の処理系は、コンパイルするとLattice Cのコードを吐き出すタイプでプログラミングの効率が悪かった。
プログラミングの効率は悪かったが、C++のコンパイラーがはき出す中間コードとしてのCのプログラムを見ると、構造化プログラミングからオブジェクト指向への進化を容易に理解できた。さらに、Cでもその気でプログラミングすれば、オブジェクト指向のプログラミングが可能であることも分かった。
この理解は、業務解析を行うときに、業務の構造化が最初のステップとして重要で、その構造化のコツは、業務のアウトプットとしての最終ゴールを眺めながら行うというアイデアにつながっている
企業の業務において科学の抱える問題は、仮説設定こそゴールを意識して行うような仕組みであるが、その証明は順に行わなければならず、さらに途中の論理を飛び越すことは許されないことだ。
すなわち、これが科学の方法で業務プロセスを組み立てると効率が悪くなる原因である。電気粘性流体の増粘問題では多数の優秀なスタッフで取り組みながら結論を出すまでに1年かかっている。
さらに本来のゴールは問題解決することだが、添加剤の入っていないゴム開発というとんでもないテーマ提案をするような取り組み結果になっていた。
(注)企業における事業開発という視点で研究開発を眺めたときに、科学的研究の意味を明確にしておく必要がある。企業の研究テーマとしてふさわしくない内容はここで述べているような技術開発の方法に切り替えるべきである。電気粘性流体の増粘問題について界面活性剤で解決できない、という結論を出した科学的研究がその後ゴム会社にどのような利益をもたらしたのか不明であるどころか、明らかにテーマ設定からその進め方までいかにも教科書的だった。STAP細胞の騒動も同様な状況だが、国民の税金で行われた研究である。科学的研究テーマは、企業の場合に誠実真摯に企業の永続性の視点で選び進めるべきである。
カテゴリー : 一般
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