2017.09/29 アジャイル開発と産学連携(3)
企業の持続的成長エンジンとして研究開発部隊のメンバーは、担当している業務がどのような事業になるのか明確にしてゆかなければならない。方針管理が徹底しておればこのような問題は考えなくてもよいように思われるが、中間管理職の力量が低い場合には、方針管理は言葉遊びの伝言ゲームとなり担当者に社長方針がそのままの形で下りてきたような状態となり業務が抽象的になる。
高純度SiCの企画は、そのような方針管理の中で生まれている。ファインセラミックス事業が社長方針として出され、その方針を研究所で実施するにあたり、担当者を海外留学に送りだしファインセラミックス研究者として育てる、という方針となった。
戦略として人材育成を行う、と言われても何も決まっていないような状態は入社3年過ぎの若者に荷が重い。3年間アメリカで遊んで帰ってくれば、社長が代わっているので方針も無くなっている、と親切にアドバイスをしてくれた先輩社員がいたが、ゴム会社でセラミックスの専門家になって帰ってきても将来苦労することは目に見えていた。
そのほかいろいろあったが、SiCの企画を提案し、留学先を無機材質研究所へ変更していただいた。SiCの企画の骨子は無機材質研究所田中広吉先生や猪股吉三先生のアドバイスである。事業計画も何も決まっていないのであれば、高純度SiCを経済的に合成できる技術を開発しなさい、と指導してくださったのだ。
たいへん具体的なアドバイスであり、このアドバイスをもとに当方は事業シナリオを作成した。もっともこのシナリオはまだ技術ができていなかったので、単なる夢物語である。夢物語でも事業イメージを具体化できると高純度SiCの技術で開発すべき商品機能が明確になる。
すると、アジャイル開発が可能となる。すなわち、アジャイル開発を行うためには、商品機能が明確になっている必要がある。既存の機能を市場に提供してイノベーションを起こす方法もあるが、技術で新機能を創りこんだ製品の方がイノベーションの確率は高くなる。この時の新機能をアカデミアの研究者と議論し見つけ出す作業を企業の研究者は産学連携で実行できる。
カテゴリー : 一般
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