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2017.09/30 アジャイル開発と産学連携(4)

ゾルをミセルに用いたラテックス合成技術は、実験の失敗から生まれている。ただし、当方がホワイトボードにコンセプトを示す漫画を描かなければ、失敗した実験を見直す作業は行われず、技術が生まれなかったはずだ。

 

面白いのは、正しく制御された実験の失敗は再現を容易にできるので、同じ失敗を正確に再現できる点である。アジャイル開発では、このような再現性を科学の力で確保できる。

 

タグチメソッドでロバストの高い技術を開発する余裕が無く、短時間に成果を出したいときには、科学の力を頼ったほうがよい。科学の良いところは、真理が一つと保証されるところである。ゆえに科学の形式知を集積しアジャイル開発を行えば、再現性は保証される。

 

ゾルをミセルに用いたラテックス重合技術では、失敗した実験手順でそのまま実用化されている。ただし、もともとはコアシェルラテックスを合成するつもりだったので、担当者も含め実用化するときには少し躊躇した。

 

一応タグチメソッドで量産技術の最適化を行ったので、ロバストの心配はなかったのだが、本当にホワイトボードに描いたような構造になっているのか不安だった。コアシェルラテックスよりも性能が良すぎたからだ。アジャイル開発でもあまりにも出来が良すぎると同様の不安がつきまとう。特にそれが肝の技術で完成された機能の場合にはなおさらだ。

 

このような場合には、出来上がった技術を科学の目で見直すためにアカデミアへ丸投げする方法もある。ゾルをミセルに用いたラテックス重合技術では、担当者を三重大川口先生のところに派遣した。

 

すでにモノが出来上がっているにもかかわらず研究を行おうという申し出について、先生から「趣味ですか」、と冗談で問われたが、真顔で「不安の解消です」、と答えている。すでに出来上がったモノについて科学の研究を行う長所は、否定証明に陥らない点である。

 

アジャイル開発を進めるときに問題となる技術の熟成は、成果物について産学連携で研究を行うことにより実現できる。そして研究の結果得られた成果は、科学の世界で真理として保障されるので、次の開発に生かすことが可能となる。これはソフトウエアーにおけるライブラリー(オブジェクト指向ならばクラス)を構築することと同じである。

 

ゾルをミセルに用いたラテックス重合技術では、シリカゾルへ界面活性剤が巻き付くように吸着し、界面活性剤として機能していることが大切な科学の真理として得られている。研究を行わなければ、単なる思いつきで書いた漫画の世界が運よく当たって開発に成功しただけで終わっていたが、この真理は、これまで他の二種類の技術開発で再利用できた。

カテゴリー : 一般

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